そもそもTJは、フランスでプロデビュー後に直接NBA入りした兄とは異なるキャリアを歩んできた。高校からアメリカで過ごし、NCAAのノースウエスタン大に進学してカレッジバスケに揉まれた。しかし2005年のドラフトで無指名に終わると、フランスに戻って兄の古巣でもあるパリのラシンでプロデビューを果たした。
ヒザのケガが原因でプロキャリアは5年と短命に終わったが、まだ現役だった2009年、兄トニーが主催したバスケットボールキャンプに参加したことが、指導者としての道を拓いた。
このキャンプにはトニーの恩師グレッグ・ポポビッチもサンアントニオから招かれてい て、彼の話を聞いたり、実践的なトレーニングを間近で見ているうちに、コーチという仕事に興味を持った。
そして現役引退後、アスヴェルでアシスタントコーチとして指導者のキャリアをスター ト。その後もオフの時期にはサンアントニオに滞在し、ポポビッチはじめスパーズのコーチングスタッフから学ぶ機会を得た。
兄がいたチームというだけでなく、スパーズが歴史的にヨーロッパ人選手を多く受け入れ、欧州のコンセプトを上手く取り入れたスタイルを確立していたことも、彼にとっては魅力的だった。自身もアメリカのNCAAとフランスでプレーしたため、目指すスタイルは「NBA、NCAA、欧州バスケから面白い要素をとって合わせたハイブリッド」だと語っている。
「バスケットボールはありとあらゆるプレースタイルが存在する。しかし肝心なのは、 選手たちが持てる力を最大限発揮できるかどうかだ。オフェンス面で私が実現したいのはそのことに尽きる。ディフェンス面では、インテンシティをいかに高められるかが重要になる。とりわけユーロリーグのレベルではエラーは許されない。40分間いい状態で戦い続けなければならない」。アスヴェルで長年若手の育成部門も担当していたTJは、選手1人ひとりの素質に目を向けることを指導の柱としている。
アスヴェルは向こう10年間の参戦が保証されるユーロリーグのAライセンス取得がほぼ確定している。総工費1億4000万ユーロを投じる新アリーナ建設計画も着々と進んでおり、クラブを欧州きっての強豪に押し上げることがトニー・パーカーの野望だ。
「トップレベルにいるクラブは、長い年月をかけて今いる場所にたどり着いた。我々はまだ新参者にすぎない。だから根気よく取り組むことが必要だ」とパーカーHCは話すが、実際、移籍市場でもアスヴェルの人気は高まっていて、選手のリクルートにも追い風となっている。
兄トニーが築いたNBAとの強固なリンク、地元サッカークラブのオリンピック・リヨンとの提携による安定した経営基盤があることに加え、ユーロリーグでもAライセンスのクラブとなれば、さらに欧州内外から優秀な選手たちが集まってくることだろう。
現場とマネジメント、両サイドからパーカー兄弟が牽引するアスヴェル。欧州の強豪の地位を目指す彼らの挑戦は、まだ始まったばかりだ。
文●小川由紀子
ヒザのケガが原因でプロキャリアは5年と短命に終わったが、まだ現役だった2009年、兄トニーが主催したバスケットボールキャンプに参加したことが、指導者としての道を拓いた。
このキャンプにはトニーの恩師グレッグ・ポポビッチもサンアントニオから招かれてい て、彼の話を聞いたり、実践的なトレーニングを間近で見ているうちに、コーチという仕事に興味を持った。
そして現役引退後、アスヴェルでアシスタントコーチとして指導者のキャリアをスター ト。その後もオフの時期にはサンアントニオに滞在し、ポポビッチはじめスパーズのコーチングスタッフから学ぶ機会を得た。
兄がいたチームというだけでなく、スパーズが歴史的にヨーロッパ人選手を多く受け入れ、欧州のコンセプトを上手く取り入れたスタイルを確立していたことも、彼にとっては魅力的だった。自身もアメリカのNCAAとフランスでプレーしたため、目指すスタイルは「NBA、NCAA、欧州バスケから面白い要素をとって合わせたハイブリッド」だと語っている。
「バスケットボールはありとあらゆるプレースタイルが存在する。しかし肝心なのは、 選手たちが持てる力を最大限発揮できるかどうかだ。オフェンス面で私が実現したいのはそのことに尽きる。ディフェンス面では、インテンシティをいかに高められるかが重要になる。とりわけユーロリーグのレベルではエラーは許されない。40分間いい状態で戦い続けなければならない」。アスヴェルで長年若手の育成部門も担当していたTJは、選手1人ひとりの素質に目を向けることを指導の柱としている。
アスヴェルは向こう10年間の参戦が保証されるユーロリーグのAライセンス取得がほぼ確定している。総工費1億4000万ユーロを投じる新アリーナ建設計画も着々と進んでおり、クラブを欧州きっての強豪に押し上げることがトニー・パーカーの野望だ。
「トップレベルにいるクラブは、長い年月をかけて今いる場所にたどり着いた。我々はまだ新参者にすぎない。だから根気よく取り組むことが必要だ」とパーカーHCは話すが、実際、移籍市場でもアスヴェルの人気は高まっていて、選手のリクルートにも追い風となっている。
兄トニーが築いたNBAとの強固なリンク、地元サッカークラブのオリンピック・リヨンとの提携による安定した経営基盤があることに加え、ユーロリーグでもAライセンスのクラブとなれば、さらに欧州内外から優秀な選手たちが集まってくることだろう。
現場とマネジメント、両サイドからパーカー兄弟が牽引するアスヴェル。欧州の強豪の地位を目指す彼らの挑戦は、まだ始まったばかりだ。
文●小川由紀子