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NBA

NBAのレジェンド、パーカーの次なる野望は「凱旋門賞制覇」。昨年8月には所有馬が初陣で優勝〈DUNKSHOOT〉

小川由紀子

2021.03.27

パーカーが所有するBest Winは昨年のレースで優勝。ブドー騎手はスパーズのチームカラーを身にまとった。(C)Getty Images

パーカーが所有するBest Winは昨年のレースで優勝。ブドー騎手はスパーズのチームカラーを身にまとった。(C)Getty Images

 日本での騎乗経験もあるブドー騎手は、現在フランスで勝鞍ナンバー1のジョッキーだ。その彼も「馬主はレース前、究極の緊張とストレスを味わう。彼がそれとどう向き合うのか興味深い」と、パーカーの競馬参戦にエールを送る。

 スポーツ選手にはホースレース好きが多い。欧州のプロサッカー界にも馬主になっている選手は数多くいるが、パーカーは、多くの資料を読み込み、関係者の話を聞き、徹底的に勉強した上で「競技・繁殖・調教」の三要素に携わっていく覚悟で自ら厩舎を構えたという。Best Winが勝利をあげたあと、業界のエキスパートたちはパーカーに自分の持ち分を売ることを強く勧めたそうだが、彼は「この仔と一緒に始めたのだから、この仔と冒険を続けたい」と、手元に残した。

「『莫大な利益が出るのに売らないなんてどうかしている!』と言われた」と、パーカーはインタビューで明かしているが、彼が情熱を注いでいるのは、自分の馬を名馬に育てること、そして、次世代の飼育員や調教師の育成を助けるといった、より長期的な競技の繁栄だ。
 
 馬の飼育に最適な環境だと言われるフランスのノルマンディー地方には多くの牧場がある。自身のインスタグラムにも写真を載せているが、パーカーは時間があれば牧場を訪れ、飼育中の馬を見て回っている。

 牧場主たちは、パーカーが時間をかけて馬と接し、飼育員たちの話に真剣に耳を傾け、積極的に質問を投げかける姿勢に、「彼は単なる馬主ではない」と確信したそうだ。

 日本で言うところの中央競馬会(JRA)にあたるフランスの競馬総括機関、フランスギャロも、パーカーのようなトップアスリートが参画することで、「ギャンブル」だけで見られがちな競馬に、よりスポーツ的な要素が加わり、イメージが向上につながると歓迎している。

 ある日、牧場を見学に行った帰りにパーカーはしみじみと「凱旋門賞に勝ちたい」ともらしたという。NBAで4度王座に就いただけでなく、外国籍選手として初のファイナルMVPにも輝いたパーカーが、中途半端に手を染めるだけで満足するはずはない。

 それが「凱旋門賞制覇」という究極に厳しい道であったとしても、彼なら時間をかけてでもそこへ到達してしまうのではないか。そう思わせるだけの実行力を、パーカーは秘めている。

文●小川由紀子
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