「僕はチームに残りたい。フィラデルフィアが大好きだし、球団のことも大好き。ファンも素晴らしい。でも、このシリーズでは良くなかったから、チャントは予想していたよ」

　シモンズはそう述べていたが、以前からジョエル・エンビードとのフィットが疑問視されていたこともあって、トレードの噂は盛んに出ていた。

　期待を裏切る敗退の後で、今オフはその噂話の勢いに拍車がかかっている。ここでシクサーズがシモンズ放出の引き金を引くかどうかは、フランチャイズの方向性を左右することになるだろう。

　７月中旬、『The Athletic』のシャムズ・シャラニア記者が、シクサーズがシモンズのトレードを模索して動き始めたとツイートした。大ベテランのマーク・スタイン記者は、トロント・ラプターズ、インディアナ・ペイサーズ、クリーブランド・キャバリアーズ、サクラメント・キングス、ミネソタ・ティンバーウルブズがシモンズ獲得に手を挙げたと記している。これらの報道を見る限り、トレードはほとんど決定的なようにも思えてくる。
  　ただ問題は、来季以降４年約１億5000万ドルもの契約を残すシモンズを放出し、どれだけの見返りが得られるかという部分だ。エンビードが全盛期の真っ只中にある今、優勝争いへの参戦がシクサーズの大命題。だとすれば、交換要員の目玉は複数のドラフト１巡目指名権ではなく、プレーオフで活躍が見込めるスーパースターレベルの選手でなければならない。シモンズの株がどん底に近い位置まで下がってしまった現在、それほどの見返りを放出してまで獲得を望むチームが現れるだろうか。

　１月、ジェームズ・ハーデン獲得を目論んだ際にはシモンズの名前が交換要員に挙がったが、ハーデンはもうネッツに移籍してしまった。そんな今、シクサーズにとって最善のターゲットは、ブレイザーズとの関係が取り沙汰され始めたリラードか。アメリカ代表に参加しているリラードは移籍の噂を否定したものの、プレーオフで敗退を続けるチームに業を煮やしているのは事実に違いなく、今後、トレード話が再燃しても不思議はあるまい。