「信じられないほど素晴らしい」と第一報を知らされたオラジュワンは手放しで喜んだ。「ロケッツとブレイザーズが試合をする時、いつも私たちは食事の席を共にしていた。そして、いつか再び一緒にプレーできたらなと話していたんだ。それが現実のものになるとは思ってもみなかった」
ヒューストンの街もかつての英雄の帰還を歓迎していた。だが、メディアの間ではこのトレードの評判は芳しいものではなかった。ただでさえ、ロケッツはディフェンディング・チャンピオンらしくない戦いを続けていた。
その上、有能なパワーフォワードのソープを失うのは痛手だった。ソープの穴はチャッキー・ブラウンやピート・チルカットら2線級の選手で埋めねばならず、しかもドレクスラーの加入は同ポジションの3ポイントシューター、ヴァーノン・マックスウェルの出番を奪うことになった。フェニックス・サンズのチャールズ・バークレーなどは「ソープを出すようじゃロケッツもおしまいだな」とせせら笑った。
悪い予感は的中し、ドレクスラー加入後は17勝18敗と負け越し。カンファレンス6位まで転落したロケッツに、連覇の道は閉ざされたかのように思えた。
ところが、プレーオフでロケッツは奇跡的なしぶとさを見せる。1回戦ではユタ・ジャズに1勝2敗のあと2連勝。第4戦ではドレクスラーが41得点、オラジュワンが40得点と大爆発した。カンファレンス準決勝ではサンズに1勝3敗から3連勝し、バークレーに赤っ恥をかかせた。
勢いに乗り、カンファレンス決勝ではリーグ最高勝率のサンアントニオ・スパーズを6戦で葬った。オラジュワンはシーズンMVPのデイビッド・ロビンソンを24.3点に抑える一方、自らは35.3点と完全にマッチアップを制した。
ロケッツの勢いはファイナルに入ってからも止まらず、オーランド・マジックをスウィーブ(シリーズ無敗勝利)。第6シードから勝ち上がった初めてのチャンピオンとなり、またリーグの勝率トップ4をすべて下した最初のチームともなった。
力のシャキール・オニールと技のオラジュワンのセンター対決は、32.8点、11.5リバウンドを記録したオラジュワンに軍配が上がり、2年連続でファイナルMVPを受賞。ドレクスラーも負けじと21.5点、9.5リバウンド、6.8アシストの大活躍だった。
「何より嬉しいのは、最高の友とともに優勝できたことだ。そして彼の力なくしては、この優勝はあり得なかった」
記者会見で、オラジュワンはドレクスラーとハイタッチを交わしながら語った。
「何て素晴らしい気分なんだ」
ドレクスラーも満面の笑みをたたえていた。「子どもの頃、いつもロケッツの試合を見ていた。そのチームで優勝できるなんて……しかもアキームと一緒だとは。これ以上の喜びはない」。
12年前に達成していたはずの栄光だった。だが、待たされた時間が長かった分、その思いも格別なものとなった。
文●出野哲也
※『ダンクシュート』2004年6月号原稿に加筆・修正
ヒューストンの街もかつての英雄の帰還を歓迎していた。だが、メディアの間ではこのトレードの評判は芳しいものではなかった。ただでさえ、ロケッツはディフェンディング・チャンピオンらしくない戦いを続けていた。
その上、有能なパワーフォワードのソープを失うのは痛手だった。ソープの穴はチャッキー・ブラウンやピート・チルカットら2線級の選手で埋めねばならず、しかもドレクスラーの加入は同ポジションの3ポイントシューター、ヴァーノン・マックスウェルの出番を奪うことになった。フェニックス・サンズのチャールズ・バークレーなどは「ソープを出すようじゃロケッツもおしまいだな」とせせら笑った。
悪い予感は的中し、ドレクスラー加入後は17勝18敗と負け越し。カンファレンス6位まで転落したロケッツに、連覇の道は閉ざされたかのように思えた。
ところが、プレーオフでロケッツは奇跡的なしぶとさを見せる。1回戦ではユタ・ジャズに1勝2敗のあと2連勝。第4戦ではドレクスラーが41得点、オラジュワンが40得点と大爆発した。カンファレンス準決勝ではサンズに1勝3敗から3連勝し、バークレーに赤っ恥をかかせた。
勢いに乗り、カンファレンス決勝ではリーグ最高勝率のサンアントニオ・スパーズを6戦で葬った。オラジュワンはシーズンMVPのデイビッド・ロビンソンを24.3点に抑える一方、自らは35.3点と完全にマッチアップを制した。
ロケッツの勢いはファイナルに入ってからも止まらず、オーランド・マジックをスウィーブ(シリーズ無敗勝利)。第6シードから勝ち上がった初めてのチャンピオンとなり、またリーグの勝率トップ4をすべて下した最初のチームともなった。
力のシャキール・オニールと技のオラジュワンのセンター対決は、32.8点、11.5リバウンドを記録したオラジュワンに軍配が上がり、2年連続でファイナルMVPを受賞。ドレクスラーも負けじと21.5点、9.5リバウンド、6.8アシストの大活躍だった。
「何より嬉しいのは、最高の友とともに優勝できたことだ。そして彼の力なくしては、この優勝はあり得なかった」
記者会見で、オラジュワンはドレクスラーとハイタッチを交わしながら語った。
「何て素晴らしい気分なんだ」
ドレクスラーも満面の笑みをたたえていた。「子どもの頃、いつもロケッツの試合を見ていた。そのチームで優勝できるなんて……しかもアキームと一緒だとは。これ以上の喜びはない」。
12年前に達成していたはずの栄光だった。だが、待たされた時間が長かった分、その思いも格別なものとなった。
文●出野哲也
※『ダンクシュート』2004年6月号原稿に加筆・修正