離れ離れになってからも、諍いは止まらなかった。機会さえあれば悪口を言い合う冷たい関係が続いていた。だが、和解の日は突然、訪れる。
2006年1月16日、ロサンゼルスでのレイカーズ対ヒート戦の試合前。シャックがコビーのもとに歩み寄り、握手をして抱き合ったのだ。
「ビル・ラッセル(元ボストン・セルティックス)に薦められたんだよ。本当のライバルとはどんなものかとね」
和解の理由をシャックは語った。
「ラッセルとウィルト・チェンバレン(元フィラデルフィア/現ゴールデンステイト・ウォリアーズほか)は長年の好敵手だったけど、2人の間に悪感情はなかった。俺たちもすべてを水に流して、前に進むべきだと諭されたんだ。マーティン・ルーサー・キング・デイ……。平和を願った偉人の記念日でもある今日が、和解にふさわしいと感じたんだ」
「驚いたけど嬉しかったよ」とコビーは素直に感想を述べた。「僕らの間にはいろいろなことがあったけど、もう過去のことだ」と。
その後、コビーは1試合81得点を記録するなどスコアリングマシンとしての才能を全面的に開花させ、2年連続得点王にもなった。一方のシャックもドゥエイン・ウェイドとともにヒートを2005-06シーズンに王座へ導いた。
当時、インタビューでシャックとの関係について問われたコビーは、次のように答えている。
「彼がいなくなって寂しいとは思わない。ただ、彼とプレーしていた時代……いろいろなことがあったけど、結局すべてが上手くいっていた時代を懐かしいと思うのは確かだ」
その後、二人の関係は日を追って改善されていく。コビーが自らの通算得点を超えた際にはシャックが祝福のコメントを発し、シャックの永久欠番セレモニーではコビーがビデオメッセージを寄せた。
引退を発表の際にシャックから「最後の試合で50点取ると約束してくれ」とけしかけられたコビーは60点を記録。「あいつこそ史上最高のレイカーだ」という戦友から贈られた最大級の賛辞に、思わず頬を緩めた。
2020年1月26日、ヘリコプター事故によってコビーは世を去った。「友であり、弟であり、ともに勝利を手にしたパートナーであり、相棒だった……俺たちはお互いに嫌い合ってはいなかった。あれは兄弟喧嘩のようなものだったんだ」。かつての確執について、シャックはそう振り返った。結末は悲劇となってしまったが、これ以上ないほど激しい展開だった2人のドラマを、NBAファンは決して忘れることはない。
文●出野哲也
※『ダンクシュート』2007年7月号原稿に加筆・修正
【PHOTO】日米識者10人が厳選!ジョーダン、コビーらNBA最強スコアラーTOP10をお届け!
2006年1月16日、ロサンゼルスでのレイカーズ対ヒート戦の試合前。シャックがコビーのもとに歩み寄り、握手をして抱き合ったのだ。
「ビル・ラッセル(元ボストン・セルティックス)に薦められたんだよ。本当のライバルとはどんなものかとね」
和解の理由をシャックは語った。
「ラッセルとウィルト・チェンバレン(元フィラデルフィア/現ゴールデンステイト・ウォリアーズほか)は長年の好敵手だったけど、2人の間に悪感情はなかった。俺たちもすべてを水に流して、前に進むべきだと諭されたんだ。マーティン・ルーサー・キング・デイ……。平和を願った偉人の記念日でもある今日が、和解にふさわしいと感じたんだ」
「驚いたけど嬉しかったよ」とコビーは素直に感想を述べた。「僕らの間にはいろいろなことがあったけど、もう過去のことだ」と。
その後、コビーは1試合81得点を記録するなどスコアリングマシンとしての才能を全面的に開花させ、2年連続得点王にもなった。一方のシャックもドゥエイン・ウェイドとともにヒートを2005-06シーズンに王座へ導いた。
当時、インタビューでシャックとの関係について問われたコビーは、次のように答えている。
「彼がいなくなって寂しいとは思わない。ただ、彼とプレーしていた時代……いろいろなことがあったけど、結局すべてが上手くいっていた時代を懐かしいと思うのは確かだ」
その後、二人の関係は日を追って改善されていく。コビーが自らの通算得点を超えた際にはシャックが祝福のコメントを発し、シャックの永久欠番セレモニーではコビーがビデオメッセージを寄せた。
引退を発表の際にシャックから「最後の試合で50点取ると約束してくれ」とけしかけられたコビーは60点を記録。「あいつこそ史上最高のレイカーだ」という戦友から贈られた最大級の賛辞に、思わず頬を緩めた。
2020年1月26日、ヘリコプター事故によってコビーは世を去った。「友であり、弟であり、ともに勝利を手にしたパートナーであり、相棒だった……俺たちはお互いに嫌い合ってはいなかった。あれは兄弟喧嘩のようなものだったんだ」。かつての確執について、シャックはそう振り返った。結末は悲劇となってしまったが、これ以上ないほど激しい展開だった2人のドラマを、NBAファンは決して忘れることはない。
文●出野哲也
※『ダンクシュート』2007年7月号原稿に加筆・修正
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