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NBA

【NBAデュオ列伝|後編】ドクターJ&マローン――華麗な技と不屈の努力で全米に旋風を巻き起こしたABA最強コンビ<DUNKSHOOT>

出野哲也

2022.11.28

■ついにNBAの頂点に立ったABA最強デュオ

 続く82年、3度目のNBAファイナル進出を果たしたドクターJだったが、またもレイカーズの前に2勝4敗で敗退。さしものアービングも、この結果には落胆した。ラリー・バード、ロバート・パリッシュ、ケビン・マクヘイルの強力フロントラインを形成するセルティックス、そしてマジック・ジョンソン&ジャバーの黄金コンビを擁するレイカーズの両方を続けて倒すには、1人の力では足りなかった。

 シクサーズは頂点に立つための最終手段として、前年に平均31.1点、14.7リバウンドの凄まじい成績で2度目のMVPを受賞していたマローンをトレードで獲得した。リーグ解体から6年、ついにABAの生み出した最高の選手2人がチームメイトとなる日が来たのだ。

 リーグでも1、2を争う実力者2人が同じチームになることを懸念する声もあった。ロケッツの大黒柱として長年君臨し続けたマローンが、ドクターJの下でナンバー2に甘んじることができるのだろうか?

 しかし、それはまったくの杞憂だった。周囲が思う以上に、マローンは自分の立場をわきまえていた。
 
「シクサーズが誰のチームかって? ドクのチームに決まってるじゃないか。俺はシクサーズが優勝する手助けをするために来たんだ。俺が何かを変えようなんて思ってないよ」

 少年時代から尊敬の的だったドクターJとともに優勝を目指すのが彼の唯一の目標であり、個人的な栄光はすべて捨て去る覚悟で彼はフィラデルフィアへやってきた。

 ドクターJも、その態度に感銘を受けた。

「モーゼスほどアンセルフィッシュな選手はそうはいない。完全にチームに溶け込んでいるし、皆に敬意を払っているよ」

 プレースタイルも性格もほとんど正反対の2人だったが、勝利への渇望とバスケットボールに対する情熱という、最も大事な2つの部分では完全に一致していた。

「俺たちは今シーズン、70勝するぜ」

 マローンの大胆不敵な宣言で幕を開けた82-83シーズン、シクサーズは無敵のチームとなった。57試合目で早くも50勝に到達し、この時点まで連敗は一度もなかった。最終的にはリーグ最多の65勝をあげ、マローンは平均24.5点、15.3リバウンドで3度目のMVPを受賞。プレーオフはどう戦うのかと聞かれたマローンは、自信たっぷりにこう答えた。

「フォー・フォー・フォー」

 プレーオフの3ラウンドすべてで、4戦全勝してみせるという意味であった。
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