現在、渡邊と八村塁（ロサンゼルス・レイカーズ）というNBAでプレーする日本人が2人もいることは、子どもたちにとっては身近に目指すべき目標がいる幸運な状況と言える。自身が子どもの頃にはそういった存在はいなかったと語る渡邊は、自分がNBAでプレーしている間にできる限り母国の若い選手たちに「ロールモデル」として何かしらの影響を与えたいと考えている。

「今の日本の子どもたちはそれぞれ好きな選手はいるでしょうが、NBAなら僕や八村塁を見て育っていくと思いますし、子どもたちの人生の中でバスケットだけをやっていくわけじゃないので、僕らがしっかりコート上だけじゃなくやっているというところも見せていきたいと思います」

　バスケットだけ秀でていればいいわけじゃない、人生での手本になれたら――。そんな思いも込めて渡邊はそう力強く話した。

　様々な国でクリニックを開いてきたバロカ氏は、今回の日本の子どもたちの「魂とエネルギー」は素晴らしく、コーチたちも刺激を受けたと情熱的なトーンで語った。また、渡邊の登場は当然、子どもたちに刺激を与えたが、渡邊自身も母国に自らが培ってきたもので恩返しをしたいと思っているはずだと、付け加えた。
  「（NBAアジアにとって）渡邊選手はこれ以上ない人物だと思っています。というのも彼は単にNBA選手であるというだけでなく、とてもナイスガイで、ジェントルマンで、コミュニティ活動に積極的だからです。NBAにとっても日本にとっても、彼のような選手としてだけでなく人間として素晴らしい資質を備えた人物がいるということはとても幸運だと感じていますよ」

　ポルトガル出身のバロカ氏は熱い口調で、そう述べた。

　バロカ氏が言うように、渡邊は日本のバスケットボール界の発展のために積極的な姿勢を常々見せており、力になりたいという旨を口にしてきた。今後もオフの期間などで、彼がこうしたイベントに参加する機会は頻繁にありそうだ。

　渡邊は、力強くこのようにコメントした。

「こういう機会が増えて日本からNBA選手が出てくれば本当に嬉しいなと思いますし、その時にまたNBAでプレーする選手が、子どもたちに対して自身が培った努力や経験、技術を教えることができたら、どんどん日本のバスケットのレベルが上がっていくと思います」

文●永塚和志

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