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NBA

“ニックス優勝のラストピース”アヌノビーの知られざる生い立ちと根底にある“父の教え”<DUNKSHOOT>

小川由紀子

2024.02.05

 高校ですでにスター選手となり、インディアナ大時代もオールアメリカン候補に選ばれるほど頭角を表わしていたが、2年生の冬にヒザの靭帯断裂という大ケガを負ってしまう。回復を待ってカレッジバスケを続けるか、思い切ってNBAに挑戦するか。悩んだ末に彼が下した決断はドラフトエントリーだった。

 2017年ドラフトでラプターズから23位で指名を受けてNBA入りを果たしたわけだが、ケガでシーズン欠場というハンデがなければ、より高い順位で指名されていただろうと言われている。

 デビューイヤーは平均20.0分のプレータイムで5.9点、2.5リバウンドという数字を記録したが、当時のラプターズ指揮官だったドゥエイン・ケイシー はアヌノビーについて、こんな感想を残している。

「若い選手というのは、考えすぎてすべてを上手くやろうとすることがある。しかし彼は、ゲームに入ったらただひたすらプレーに打ち込む。あの若者はいい仕事をするよ」
 
 “シンプルにやるべきことに打ち込む”という姿勢は、父親の教えを彷彿とさせる。妻に先立たれたあと、6人の子どもを育てたアヌノビーの父は、以前カナダのスポーツサイト『スポーツネット』にこう語っている。

「私たちはきちんとした家庭を築こうとした。“きちんとした ”というのは、物事をきちんとこなすということだ。勤勉さや秩序、成功を重んじる。話さなければならない時以外は話さない。そしてもし話すのなら、会話の邪魔にならず、会話を豊かにするようなことを言うべきだ」

 アヌノビーはインタビューでもコメントが短いことで知られているが、“伝えるべきことだけをシンプルに”という父親の教育の影響かもしれない。

 しかしその最愛の父も、ラプターズでの2年目を迎える前に帰らぬ人となってしまった。そしてそんな彼を支えたのが、同じく若くして父を亡くしたチームメイトのパスカル・シアカム(現インディアナ・ペイサーズ)やカワイ・レナード(現ロサンゼルス・クリッパーズ)だった。
 
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