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NBA

「NBAの歴史で最高の選手になっていたら素晴らしかったことだろう。でも…」度重なる挫折を糧に欧州で輝く“元スター候補”の今<DUNKSHOOT>

小川由紀子

2025.03.21

 1度目の大ケガを乗り越え、オールスターにも選ばれるか、というキャリアがまさに花開こうとしている時期での再度の離脱が、どれだけ辛いものだったかは想像に難くない。

「けれど、その後もいろいろな場所でプレーを続けることができた。NBAの歴史で最高の選手の1人になっていたら、それは素晴らしかったことだろう。でも今の生活も、自分にとっては同じくらいに素晴らしい。

 今までプレーを続けてこられたのは、決して当たり前のことなんかじゃないんだ。自分は2度ACLを断裂し、2度半月板を修復した。普通に歩くことさえままならなかったはずの自分が、今もこうして高いレベルでプレーを続けているんだからね」

 誕生日の翌日、16日に行なわれたスペインACBリーグのアンドラ戦で、パーカーは欧州でのキャリアハイとなる34得点をマークした。

 バックスを退団後にジャーニーマンとなった顛末も、パーカー自身としては、ケガとは関係ないことが要因だと考えているようだ。事実、スタッツを見ても、得点やリバウンドで十分チームの戦力となる数字を残している。本人もプレー的にはコンスタントにやっていけたと感じていたそうだが、組織のあり方が自分とは合わなかったのだという。
 
 セルティックス退団後、しばらくはバスケットボールをプレーする意義も見出せず、エージェントの電話にも出ずに、たまにトレーニングしたりローカルチームでプレーする日々を過ごしていたというが、そうした生活が1年半ほど続いた2023年の夏、転機が訪れる。

 学生時代から自分を知るエージェントから「お前はプレーすべきだ」と促され、続けて別のエージェントからも「明日バルセロナに来られるか?」と誘いを受けると、24時間後にはバルセロナとの契約にサインしていたという。

「ここでのバスケットボールは、スピリチュアルなものだ。人々はバスケットボールに生き、食べ、飲み、眠る。それこそが自分がいたい場所だ。僕はやっぱり、バスケットボールが大好きだから」

 キャリアに起きた出来事は、「自分の人生を良い方向に変えてくれた」とパーカーは言う。自分の身体をよりケアするようになり、人の意見に耳を傾け、身体によくないものの摂取をやめる、といった姿勢も身についた。

 ゴールデンステイト・ウォリアーズで6年間プレーした元NBA選手の父ソニーや、熱心に教会活動をしていた母、その母を手伝う中で交流した司教たち、そしてデューク大の恩師コーチKなど、人生において数々の“師”に恵まれたことも、パーカーを地に足のついた人物に育てた。

「今の自分は満たされている。僕の中には空虚はないし、追い求めているものもない。後悔もまったくない」

 ちなみに、彼には子どもの頃からやってみたい夢の職業があるそうだ。それは、動物園の飼育員。今でもその思いは持ち続けているそうで、「チームが好調な時だったら、インターンシップとか、ナイトシフトとかでもやらせてもらいたい」と真顔で語るパーカーは、本当に満たされた表情をしていた。

 回り道をしながらも、パーカーは今、最高のバスケ人生を謳歌している。

文●小川由紀子
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