最初のNBA挑戦について数年前のインタビューで聞かれた際、彼はこう答えていた。
「確かに良い経験ではなかった。カレッジで学んだものとNBAでのバスケはまったく別物だった。けれど良い見方をすれば、数試合だけでも出場して、NBA でプレーするという夢は叶った。そして欧州に渡ったことで、より深くバスケをプレーするということを学ぶことができている」
いたって前向きなヘイズ・デイビスだが、彼には、そんなポジティブな捉え方ができるようになった出来事があったのだという。きっかけは、何年か前に耳にした中国の故事とのことだ。
「農家の息子が怪我をしたことでみんな嘆いたが、怪我をしたおかげで戦争に行かずにすみ、戦死を免れた」という話だそうで、おそらく『人間万事塞翁が馬』の一説だろう。以来彼は、どんなことでも自分の身に起きたことは良いことだったんだ、と思えるようになった。
ドラフトで指名されなかったことは残念だったが、順風満帆にデビューしていたとしても、チームに定着できない例もある。ケガをして早期にキャリアを終える場合だってある。ならばこうして欧州へ来て、知らない土地で暮らし、それまで知り合う機会のなかったヨーロッパのコーチたちや選手たちと共闘したことで、自分のキャリアははるかに豊かになったと、彼は以前、ユーロリーグのポッドキャストで話していた。
そこにはもちろん、彼自身のオープンさや他文化への興味、勉強家な性格も助けになっている。これまで所属したトルコ、リトアニア、スペインに加え、彼が“欧州のバスケ言語”と例えるセルビア、クロアチアの言葉も学び、いずれも日常会話ができるレベルまでマスターしているというから驚きだ。
自身のYoutubeチャンネルでは、アブダビで行なわれたファイナル4の舞台裏を記録した動画を投稿するなど、スター選手ながら飾らない素顔を見せているヘイズ・デイビスは、ファンからの人気も抜群。フェネルバフチェファンから聞こえてくるのも、「クラブを去られるのは寂しいが、彼のキャリアを応援したい」という前向きなメッセージばかりだ。
そんな豊かな体験を積み上げた男が30歳で再挑戦するNBAは、ルーキーの頃とは違った景色に見えることだろう。チームの柱として欧州の頂点を極めた自信と経験も、挑戦を後押ししてくれるはずだ。
ちなみに、前回NBAでプレーしていた時代の登録名はナイジェル・ヘイズだった。デイビスは、彼の母親の再婚相手の姓。継父であるアルバート・デイビス氏について彼は、「これまで会った中で最高の人物」とことあるごとに絶賛している。その継父への敬意を表す意味で、数年前に苗字を“Hayes-Davis”に変更した。
2度目の挑戦がどのような結果になろうとも、「これが一番自分にとって良いことだったのだ」とナイジェル・ヘイズ・デイビスが思えるであろうことは間違いない。
文●小川由紀子
「確かに良い経験ではなかった。カレッジで学んだものとNBAでのバスケはまったく別物だった。けれど良い見方をすれば、数試合だけでも出場して、NBA でプレーするという夢は叶った。そして欧州に渡ったことで、より深くバスケをプレーするということを学ぶことができている」
いたって前向きなヘイズ・デイビスだが、彼には、そんなポジティブな捉え方ができるようになった出来事があったのだという。きっかけは、何年か前に耳にした中国の故事とのことだ。
「農家の息子が怪我をしたことでみんな嘆いたが、怪我をしたおかげで戦争に行かずにすみ、戦死を免れた」という話だそうで、おそらく『人間万事塞翁が馬』の一説だろう。以来彼は、どんなことでも自分の身に起きたことは良いことだったんだ、と思えるようになった。
ドラフトで指名されなかったことは残念だったが、順風満帆にデビューしていたとしても、チームに定着できない例もある。ケガをして早期にキャリアを終える場合だってある。ならばこうして欧州へ来て、知らない土地で暮らし、それまで知り合う機会のなかったヨーロッパのコーチたちや選手たちと共闘したことで、自分のキャリアははるかに豊かになったと、彼は以前、ユーロリーグのポッドキャストで話していた。
そこにはもちろん、彼自身のオープンさや他文化への興味、勉強家な性格も助けになっている。これまで所属したトルコ、リトアニア、スペインに加え、彼が“欧州のバスケ言語”と例えるセルビア、クロアチアの言葉も学び、いずれも日常会話ができるレベルまでマスターしているというから驚きだ。
自身のYoutubeチャンネルでは、アブダビで行なわれたファイナル4の舞台裏を記録した動画を投稿するなど、スター選手ながら飾らない素顔を見せているヘイズ・デイビスは、ファンからの人気も抜群。フェネルバフチェファンから聞こえてくるのも、「クラブを去られるのは寂しいが、彼のキャリアを応援したい」という前向きなメッセージばかりだ。
そんな豊かな体験を積み上げた男が30歳で再挑戦するNBAは、ルーキーの頃とは違った景色に見えることだろう。チームの柱として欧州の頂点を極めた自信と経験も、挑戦を後押ししてくれるはずだ。
ちなみに、前回NBAでプレーしていた時代の登録名はナイジェル・ヘイズだった。デイビスは、彼の母親の再婚相手の姓。継父であるアルバート・デイビス氏について彼は、「これまで会った中で最高の人物」とことあるごとに絶賛している。その継父への敬意を表す意味で、数年前に苗字を“Hayes-Davis”に変更した。
2度目の挑戦がどのような結果になろうとも、「これが一番自分にとって良いことだったのだ」とナイジェル・ヘイズ・デイビスが思えるであろうことは間違いない。
文●小川由紀子
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