専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
東京五輪

「東京でお会いしましょう!」ヤオ・ミン会長もひと安心。新型コロナウイルスで開催地変更も、女子中国代表が五輪切符を獲得

小川由紀子

2020.02.10

強豪のスペインを下し5大会連続9度目の五輪出場を決めた中国。最終戦で韓国にも勝利し、3戦全勝で予選を終えた。(C)Mansoor Ahmed/Ahmed photos

強豪のスペインを下し5大会連続9度目の五輪出場を決めた中国。最終戦で韓国にも勝利し、3戦全勝で予選を終えた。(C)Mansoor Ahmed/Ahmed photos

 中国、韓国、スペイン、イギリスの4か国が競うこのグループの予選は、当初は中国の仏山市で開催される予定だった。しかしコロナウイルスの影響を鑑みて、開幕10日前の1月27日にセルビアへと開催地が変更。それから遠征の準備、時差対策など、多くの対応に追われたが、リーミンHCは、「いろいろなことを非常に短期間にこなさなくてはならなかった。ただ、やるべきことは、それまでにしっかり準備していたし、逆にこの状況は、かえって選手たちを発奮させることにもつながった。『よし、やってやろうじゃないか!』と、よりモチベーションが高まった」と、むしろポジティブな影響があったと語った。「単なるスポーツ競技ではなく、我々は国のために戦った」と。

 元NBAスターで、現在中国バスケットボール協会の会長を務めるヤオ・ミンも、「自分たちは十分な準備をしていたので、このような状況になっても動じたりはしなかった。ただ我々にとって懸念だったのは、同じグループで戦うスペイン、イギリス、韓国という他のチームのことだった。彼らは非常に不安だったに違いないので」と、心境を吐露した。

 その懸念どおり、同じグループで戦う他国の関係者は、私的な発言として「選手たちを中国選手団と同じホテルに滞在させることには不安を感じる」ともらしていた。現地の大会実行委員会によれば、中国選手団を乗せた飛行機は、ベオグラードのニコラ・テスラ国際空港到着時にスクリーニング(審査)を受けたと発表。選手団と関係者以外は、会場には中国からの応援団やメディアの姿もない。国営通信社・新華社の現地支局員のみだ。
 
 一部では、中国は不参加扱いになるのではないか、という噂すら流れた。
「FIBAがこのように開催地を変えて、大会を予定どおり開催するという処置をとってくれたことにとても感謝している。選手たちは出場できて、プレーできることの喜びを感じている。どんな状況にあっても、それが逆境であっても、それをモチベーションに変えて、自国の人たちのために戦う。それが代表チームの存在意義というものだから」。ヤオ会長はそう語り、「東京でお会いしましょう!」と笑顔を見せた。

 中国チームの選手たちもみな、マイクを向けられるたびに「辛い状況に置かれている国の人たちに勇気を与えたかった。私たちはそのために頑張った」と力強く語った。そして彼女たちの献身的なプレーにも、その思いが十分にあふれていた。

 スペイン戦でチームハイの13得点をマークしたSGのリ・ミンは、「これでやっとスタートラインに立った。この予選通過は、ここから続く道へのドアを開けるための鍵。私たちは、きっと明るい未来を手にすることができる」と目を輝かせた。

 逆境をモチベーションに変えて五輪行きを勝ち取った中国女子代表チームは、この予選でかけがえのない強さを手に入れた。

文●小川由紀子
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号