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NBA

リーグの黒歴史として抹消された”幻のスラムダンク・コンテスト”王者、ダーネル・ヒルマン【NBA秘話・前編】

大井成義

2020.02.12

ドクターJらが見事な技を連発し、ABAのスラムダンク・コンテストは大成功に終わった。(C)Getty Images

ドクターJらが見事な技を連発し、ABAのスラムダンク・コンテストは大成功に終わった。(C)Getty Images

 身長206cm、体重98kgと細身なヒルマンは並外れた跳躍力を持ち、得意のブロックとリバウンドを武器に、主にシックスマンとしてチームの2連覇(72、73年)に貢献した。

 だがなんと言っても、驚異の跳躍力を生かしたダンクこそが彼のトレードマークだった。ついたあだ名が“ドクター・ダンク”。その桁外れの跳躍力には、数々の逸話が残っている。

 バックボードの上に置いたコインをジャンプして取ったというエピソードは、何人もの選手が持ちネタにしているが(写真や動画で撮影されたケースはひとつもない)、ヒルマンは置かれた100ドル札をジャンプして取り、着地する前にポケットに入れてみせたという。

 もうひとつのトレードマークが、巨大なアフロヘア。バスケットボールの歴史上最大のアフロとされ、最盛期にはその幅が60cmに達し、見た目の身長は7フィート(213cm)を優に超えていたそうだ。97年に元ABA選手たちがイベントで集結した際、ヒルマンは“ABA最大のアフロ大賞”を受賞している。
 
 NBAとの覇権争いに敗れたABAは、財政難に陥るチームが続出した。体力的に持ちこたえられそうな4チームがNBAに合流し、75-76シーズンをもって9年間の短い歴史に幕を閉じることになる。リーグが消滅するまでに少しでも収益を確保する必要があったABAは、最後のオールスターゲームのハーフタイムにスラムダンクのイベントを企画する。

 ABAにはドクターJやデイビッド・“スカイウォーカー”・トンプソン(元デンバー・ナゲッツほか)、ジョージ・“アイスマン”・ガービン(元サンアントニオ・スパーズほか)など、NBAを凌駕する名ダンカーが揃っていた。オールスター当日なら、選手のスケジューリングや交通費、宿泊費の心配もいらず、元手をかけないで集客や視聴率アップが見込める。厳しい財政状態のABAにとって、まさしく一石二鳥のイベントであり、前評判も上々、狙い通りチケットは完売した。

 5人の凄腕ダンカーによる決戦は、ドクターJがレーンアップを成功させ優勝を飾る。プロのバスケットボール選手による史上初のスラムダンク・コンテストは予想を上回る盛り上がりを見せ、大きな話題となった。

 その2匹目のドジョウを狙ったのが、NBAとテレビ局のCBSだった。ドクターJやトンプソン、ガービンなど人気ダンカーたちのNBA合流は決定している。どうせやるなら、もっと規模を拡大して、期間も長くして、全米中継で……。言わずもがな、それらの欲が失敗へとつながり、黒歴史と化したわけである。(後編に続く)

文●大井成義

※『ダンクシュート』2019年4月号掲載原稿に加筆・修正。

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