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NBA

「1人の人間の夢が“物”扱いされた」スター街道を驀進していたウェバーが、NBA入り直後に味わった屈辱と苦悩の日々

北舘洋一郎

2020.04.03

現在は解説者として活躍。そのスタイルは現役時と同様に感覚、センス派だ。(C)Getty Images

現在は解説者として活躍。そのスタイルは現役時と同様に感覚、センス派だ。(C)Getty Images

 また、ウェバーはマジック・ジョンソン(元ロサンゼルス・レイカーズ)が自分のアイドルだったと言う。

「同郷出身のマジックは俺のアイドルだ。いつも笑顔で、プレーすることを心から楽しんでいる。そういう選手になりたいと思っていた。当時の強豪を見渡せば、コーチと選手の関係は上下ではなく、それぞれの役割を担い、勝利というゴールに向かう船を一緒に動かす“同士”としてコミュニケーションを図っていた。でも、ウォリアーズにはそれが皆無だった」

 フィル・ジャクソン(元シカゴ・ブルズHCほか)はかつて「指揮官がいなくても試合はできるが、選手がいなければゲームにならない。これを大前提にHCは指揮をとるべきだ。選手に媚びろと言っているのではない。お互いの信頼関係を築くことで、選手は同じことを言われても、信頼したコーチからはアドバイスを受けたと感じ、信頼していないコーチから言われれば怒鳴られたと感じるだろう」と語っている。

 結局、ルーキーシーズン終了後にウォリアーズはウェバーをワシントン・ブレッツ(現ワシントン・ウィザーズ)へと放出。新人王を獲った直後の将来有望な大物が、1年でチームを離れるというのもNBAではなかなかない事件だった。

「ウォリアーズ時代の楽しみは、チームメイトと一生懸命にプレーして、年上のスーパースターたちを打ちのめしていくことだった。チャールズ・バークレー(元フェニックス・サンズほか)、カール・マローン(元ユタ・ジャズほか)、デイビッド・ロビンソン(元サンアントニオ・スパーズほか)とマッチアップして勝利するのが特に楽しかったね」とウェバー。
 
 NBA選手としての彼を評価するなら、分類としてはシャックやアレン・アイバーソン(元フィラデルフィア・セブンティシクサーズほか)と同じように、“若くしてずば抜けた才能を神から与えられた天性のスター”だったのだろう。この3人から話を聞いた時の共通点は「あまり努力を重ねなくても、NBAで普通にプレーできた」というような回答をしたことだ。確かに、この3人は“バスケットボールは楽しむもので、嫌々苦労してまでやるものじゃない”というスタイルだった。

 現在、解説者としてマイクを握るウェバーの試合の見方は、まさにその感覚というか、センスを感じるコメントが多く、決して理論的ではないかもしれないが、選手目線で試合の流れを追いかけるスタイルは、ほかの解説者ができるものではない。過去に多くの経験をしてきた、ウェバーだからこそできるのだろう。

文●北舘洋一郎

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