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NBA

ミラー&ジャクソンが演じた“最高に魅力的な悪役”。ファンの間で永遠に語り継がれる2人のドラマ【NBAデュオ列伝|後編】<DUNKSHOOT>

出野哲也

2022.04.17

「ニューヨークのプレーグラウンドで、マジックの動きをすべて真似したものさ。史上最高のPGの記録を抜くことができたなんて、とても信じられない」

 最終的なアシストの総数は1万334本にまで達し、ストックトンに次いで2位(当時)となった。史上屈指のブレーメーカーとして、ジャクソンはその名をNBAの歴史に刻みつけたのだった。

 一方のミラーは、ジャクソンが去った後もペイサーズで奮闘を続けた。若い頃はその毒舌で疎まれたミラーだったが、年齢を重ねるごとにリーグでも最も敬意を払われる選手になっていった。

 元々彼は悪い人間ではなかった。仇敵ニックスのパトリック・ユーイングやスタークスも、決してミラーを嫌ってはいない。犬猿の仲と言われるジョーダンでさえ、個人的にミラーにアドバイスを送ったことがある。毒舌や偽悪的な振る舞いの根底にあるのが激しい闘争心であることは、対戦する選手たちにはわかっていたのだ。

 キャリアの最後までベイサーズ一筋を貫いたことも、彼の名声を高めた。彼は現代のNBAでは死語となりつつある“チームへの忠誠心”を決して失わなかった。通算出場試数1389試合は引退時点で6位だったが、単独チームで達成されたものとしては、ジャズのストックトンに次いで2位だった。

 卓越した技術も最後まで衰えなかった。2004-05シーズンはフリースロー成功率93.3%で自己記録を更新し、5回目のリーグ1位に。史上13人目の通算2万5000得点にも到達し、代名詞である3ポイント成功数は2560本。これは2位のデイル・エリス(元シアトル・スーパーソニックス/現オクラホマシティ・サンダーほか)に800本以上もの大差をつけての1位であった(現在でも4位)。数々の印象的なクラッチショットを沈めてきたミラーは、記憶にも記録にも残る選手だった。

 ブルズやニックスなどの人気チームのファンにとって、ミラーとジャクソンは何とも癇にさわる仇敵だった。だが、映画や小説などでも、悪役に魅力がなければ面白いドラマは生まれない。NBAでもまたしかり。最高に魅力的なヒール役を演じたミラーとジャクソン――彼らの勇姿はベイサーズ・ファンだけでなく、NBAを愛する人々の間で永遠に語り継がれていくだろう。

文●出野哲也

※『ダンクシュート』2006年1月号掲載原稿に加筆・修正。

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