2003-04シーズンには、前々年に最優秀ヘッドコーチ賞に選ばれていたリック・カーライルを更迭し、フィラデルフィア・セブンティシクサーズからラリー・ブラウンを招聘した。一部では非難の声も巻き起こったが、カンファレンス決勝でそのカーライル率いるインディアナ・ペイサーズを下し、デュマースの判断が正しかったことがまたしても証明された。
圧倒的な不利を予想されていたファイナルでも、ピストンズはレイカーズを下して14年ぶりの優勝を果たす。デュマースの手腕は、触れるものすべてを黄金に変えるミダス王さながらであった。2014年を最後にピストンズを退団し、現在はNBAのバスケットボール部門副社長の職にある。
デュマースに対する賞賛の声が大きくなるのに反比例して、トーマスの名声は下向きになる一方だった。2000年にペイサーズのヘッドコーチに就任したが、プレーオフでは3年連続で1回戦敗退。2003年にバードがフロント入りすると、すぐに更迭の憂き目を見た。
その後すぐにニックスにGMとして招かれ、失地回復を図ったトーマスだったが、評判は散々。2006年から2シーズンは自ら指揮を執ったが結果を出せず、これがNBAでの最後の仕事になった。以後は大学のコーチ、WNBAのフロントなどで働いたが、どれもはかばかしい成果をあげることはなかった。
「Nice guys finish last. (お人よしでは勝負には勝てない)」
これは、MLBの名将レオ・ドローチャーが残した有名な言葉である。デュマースはそれが真実ではないことを証明した。彼が再生させたピストンズはバッドボーイズのイメージとはほど遠いが、バッドボーイズと同じくらい強く、魅力のあるチームとなった。
そのことを誰よりも痛感しているのがトーマスだろう。今年2月、読者参加型のウェブサイトが実施した“NBA史上最悪のGM”投票で、彼は不名誉な1位に――仇敵のジョーダンを抑えて――選ばれてしまった。かつての弟分、デュマースとの大きな隔たりが一体どこで生じたのか。その答えはトーマス自身を含め、誰にもわからない。
文●出野哲也
※『ダンクシュート』2004年10月号掲載原稿に加筆・修正。
【PHOTO】オラジュワン、ジョーダン、バークレー、ペニー……NBAの歴史を彩った偉大なレジェンド特集!
圧倒的な不利を予想されていたファイナルでも、ピストンズはレイカーズを下して14年ぶりの優勝を果たす。デュマースの手腕は、触れるものすべてを黄金に変えるミダス王さながらであった。2014年を最後にピストンズを退団し、現在はNBAのバスケットボール部門副社長の職にある。
デュマースに対する賞賛の声が大きくなるのに反比例して、トーマスの名声は下向きになる一方だった。2000年にペイサーズのヘッドコーチに就任したが、プレーオフでは3年連続で1回戦敗退。2003年にバードがフロント入りすると、すぐに更迭の憂き目を見た。
その後すぐにニックスにGMとして招かれ、失地回復を図ったトーマスだったが、評判は散々。2006年から2シーズンは自ら指揮を執ったが結果を出せず、これがNBAでの最後の仕事になった。以後は大学のコーチ、WNBAのフロントなどで働いたが、どれもはかばかしい成果をあげることはなかった。
「Nice guys finish last. (お人よしでは勝負には勝てない)」
これは、MLBの名将レオ・ドローチャーが残した有名な言葉である。デュマースはそれが真実ではないことを証明した。彼が再生させたピストンズはバッドボーイズのイメージとはほど遠いが、バッドボーイズと同じくらい強く、魅力のあるチームとなった。
そのことを誰よりも痛感しているのがトーマスだろう。今年2月、読者参加型のウェブサイトが実施した“NBA史上最悪のGM”投票で、彼は不名誉な1位に――仇敵のジョーダンを抑えて――選ばれてしまった。かつての弟分、デュマースとの大きな隔たりが一体どこで生じたのか。その答えはトーマス自身を含め、誰にもわからない。
文●出野哲也
※『ダンクシュート』2004年10月号掲載原稿に加筆・修正。
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