その記事によると、ドリームチームが最初に検査結果を精査した際、可能性が高いと考えられる原因のひとつは、コカインによる心臓障害だった。医師の1人がルイスにそのことを尋ねると、コカインを摂取したことはないと断言。そこで念のため、厳密なドラッグテストを実施すべくルイスに協力を依頼したところ、彼は頑なに拒んだ。その後も何度か同じ要請を繰り返したが、苛立ったルイスは突如病院を鞍替えしたのだという。
死亡証明書の発行に4か月もの時間がかかったことと、その内容にも記者は注目した。死亡証明書に書かれた死因は、ウイルスの感染により心臓に炎症をきたしたというもので、常識では考えにくいものだった。
さらにジャーナルの記事によると、死亡鑑定をした州の検査官と病理学者に対して、妻のドナが「もし死亡証明書にドラッグ関係のことを書いたら訴える」と脅した可能性が高いのだという。
記事の内容は事実無根であるとして、セルティックスはジャーナルと親会社のダウ・ジョーンズに対し、1億ドルの訴訟を起こすと声明を発表。ところが、その後もルイスのドラッグ常用説を裏付けるいくつかの疑惑が浮上する。
①大学時代のチームメイトが、「1985年のレッド・アワーバック・バスケットボールキャンプで、ルイスがレン・バイアスと一緒にコカインを吸引していたのを目撃した」と『ボストン・グローブ』紙に告白。
②1987年、大学時代のドラッグテストでルイスに陽性反応が出ていたが、大学側により隠蔽されていた。
③ルイスの母親が、元コカイン中毒者だった。
①は証言者が後に公の場で発言を撤回し、②は大学側が当時の記録を再調査したところ、そのような事実はなかったと否定。だが、ルイスのコカイン疑惑はまだ完全に晴れていない。
1996年、ドナは担当医マッジを相手取り訴訟を起こす。夫の死はマッジの医療ミスによるものであり、ジャーナルの記事にあった多くの点が、マッジにしか知りえない事柄であり、それらの情報漏洩は守秘義務違反であるとして憤怒したのだった。その裁判にドナは敗訴したが、その後も2度に渡りマッジに対し訴訟を起こし、すべて退けられている。
はたして、ルイスの死はドラッグに起因するものだったのだろうか? あの真面目で誠実なルイスが、本当にコカインユーザーだったのだろうか? 真相を知っているのはドナとごく身近にいた者だけであり、その答えは永久に謎のままだろう。
それでも、多くのセルティックスファンにとって、ルイスがコカインを使用していたのかどうかは、さしたる問題ではなかったようだ。コカイン疑惑にメディアが揺れ動くなか、地元のさるスポーツエディターによりしたためられた文章が、セルッティクスファンの、そしてボストン市民の声を代弁していたように思う。
「ルイスのコカイン使用疑惑を追及することが、そんなに大事なことだろうか? もし彼がコカインを使用していたとしても、それはそれでいい。我々が知る限り、ルイスのプレーや生き方にドラッグは影響を及ぼしていなかった。
ドラッグはたしかに違法である。しかし、それ以上に大切なことは、彼がコートとコミュニティにおいて人々に何を与え、我々が何を享受したかということだ。コカイン疑惑の話は風化しても、ルイスという素晴らしい人物がセルティックスに在籍したという事実を我々は決して忘れない。コカインの話は忘れ、彼の最後のジャンプショットを想い出そうではないか」
文●大井成義
※『ダンクシュート』2003年8月号掲載原稿に加筆・修正。
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死亡証明書の発行に4か月もの時間がかかったことと、その内容にも記者は注目した。死亡証明書に書かれた死因は、ウイルスの感染により心臓に炎症をきたしたというもので、常識では考えにくいものだった。
さらにジャーナルの記事によると、死亡鑑定をした州の検査官と病理学者に対して、妻のドナが「もし死亡証明書にドラッグ関係のことを書いたら訴える」と脅した可能性が高いのだという。
記事の内容は事実無根であるとして、セルティックスはジャーナルと親会社のダウ・ジョーンズに対し、1億ドルの訴訟を起こすと声明を発表。ところが、その後もルイスのドラッグ常用説を裏付けるいくつかの疑惑が浮上する。
①大学時代のチームメイトが、「1985年のレッド・アワーバック・バスケットボールキャンプで、ルイスがレン・バイアスと一緒にコカインを吸引していたのを目撃した」と『ボストン・グローブ』紙に告白。
②1987年、大学時代のドラッグテストでルイスに陽性反応が出ていたが、大学側により隠蔽されていた。
③ルイスの母親が、元コカイン中毒者だった。
①は証言者が後に公の場で発言を撤回し、②は大学側が当時の記録を再調査したところ、そのような事実はなかったと否定。だが、ルイスのコカイン疑惑はまだ完全に晴れていない。
1996年、ドナは担当医マッジを相手取り訴訟を起こす。夫の死はマッジの医療ミスによるものであり、ジャーナルの記事にあった多くの点が、マッジにしか知りえない事柄であり、それらの情報漏洩は守秘義務違反であるとして憤怒したのだった。その裁判にドナは敗訴したが、その後も2度に渡りマッジに対し訴訟を起こし、すべて退けられている。
はたして、ルイスの死はドラッグに起因するものだったのだろうか? あの真面目で誠実なルイスが、本当にコカインユーザーだったのだろうか? 真相を知っているのはドナとごく身近にいた者だけであり、その答えは永久に謎のままだろう。
それでも、多くのセルティックスファンにとって、ルイスがコカインを使用していたのかどうかは、さしたる問題ではなかったようだ。コカイン疑惑にメディアが揺れ動くなか、地元のさるスポーツエディターによりしたためられた文章が、セルッティクスファンの、そしてボストン市民の声を代弁していたように思う。
「ルイスのコカイン使用疑惑を追及することが、そんなに大事なことだろうか? もし彼がコカインを使用していたとしても、それはそれでいい。我々が知る限り、ルイスのプレーや生き方にドラッグは影響を及ぼしていなかった。
ドラッグはたしかに違法である。しかし、それ以上に大切なことは、彼がコートとコミュニティにおいて人々に何を与え、我々が何を享受したかということだ。コカイン疑惑の話は風化しても、ルイスという素晴らしい人物がセルティックスに在籍したという事実を我々は決して忘れない。コカインの話は忘れ、彼の最後のジャンプショットを想い出そうではないか」
文●大井成義
※『ダンクシュート』2003年8月号掲載原稿に加筆・修正。
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