怒涛の快進撃を見せ続けたスコットランドの古豪が、ついに栄冠を勝ち取った。

　現地時間３月７日に開催されたスコティッシュ・プレミアリーグ第31節で、９連覇中の絶対王者セルティックが敵地でダンディー・ユナイテッドとスコアレスドローの引き分け。この瞬間、レンジャーズの10年ぶりとなるリーグ制覇が決定した。

　宿敵から待望の王座を奪ったレンジャーズ。ここまでの道程は決して平たんなものではなかった。2012年２月にクラブは財政難から自己破産に追い込まれ、４部降格を経験。なんとかトップリーグに復帰した2015年以降も“宿敵”セルティックとの差をなかなか埋められず、苦戦が続いた。

　そんなレンジャーズにとって大きな転機となったのが2018年５月、スティーブン・ジェラードの監督就任だ。

　トップチームでの指揮経験がない“新米監督”ながら、現役時代に圧倒的なキャプテンシーで名門リバプールを統率した才覚を存分に発揮。元イングランド代表FWのジャーメイン・デフォーや、あのゲオルゲ・ハジの息子で、ルーマニアの逸材MFヤニスら個性豊かな人材を見事にまとめ上げた。

　ジェラード体制３年目を迎えた今シーズンは、ホームで16戦全勝（47得点／２失点）という驚異的な強さで他を圧倒。32戦無敗で大願を成就させた。

　クラブ消滅の危機も乗り越えて10年ぶりに覇を唱えた名門。通算55回目の戴冠は、現地でも小さくない話題となっている。英公共放送『BBC』は、「レンジャーズがようやくチャンピオンになった」と伝えたうえで、かつてレンジャーズで選手兼任監督を務めた元スコットランド代表FWグレアム・スーネスのコメントを紹介している。

【動画】レンジャーズ公式がアップした感動的な優勝祝福動画はこちら 「まずはスティーブン・ジェラードとその選手たちを祝福すべきだ。そしてサポーターたちにもおめでとうと言いたい。彼らにとってセルティックの長き渡る支配は実に不快だっただろう。そこからようやく脱したんだ！ 今のチームは王座に値すると思う」

　クラブの誰もが、悲願のリーグタイトルに興奮を隠せない。優勝決定直後の公式ツイッターにはサポーターに向け、こんなセンチメンタルなメッセージを発信した。

「我々は落ちた。我々は支えあった。我々は応援した。我々は泣きもしたし、負けもした。勝利して、喧嘩もして、ゴールを祝ってきた。我々は信頼し合い、とにかく信じてきた。我々は夢も見てきた。我々はレンジャーズだ。我々はチャンピオンだ」

　低迷期を脱し、ついに宿敵の牙城を崩したレンジャーズ。彼らはここから再び黄金期を築けるのだろうか。

構成●THE DIGEST編集部