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「給与遅配が2度目の場合は…」浅野拓磨のパルチザン離脱が現地で波紋!セルビアメディアが「助っ人」と「国内選手」の不平等な現状を説明

THE DIGEST編集部

2021.05.04

パルチザンとの契約解除に踏み切った浅野の行動に、同クラブのレジェンドは「驚きでも何でもない」と語った。(C)Getty Images

パルチザンとの契約解除に踏み切った浅野の行動に、同クラブのレジェンドは「驚きでも何でもない」と語った。(C)Getty Images

 浅野拓磨がセルビア1部のパルチザン・ベオグラードとの契約解除を自身のブログとSNSで発表した件は、大きな波紋を呼んでいる。

 クラブの給与遅配や不誠実な対応に対する対抗措置であると説明した浅野に対し、パルチザン側は契約違反であるとして提訴の可能性を示唆。また、同クラブの選手たちも、シーズンが佳境を迎える中でチームを去った日本人選手に対し、厳しい視線を向けている。

 パルチザンの主将を務める大ベテラン守護神のウラジミール・ストイコビッチが「浅野には失望したし、裏切られた気分だ」と語れば、副主将のラザール・マルコビッチは「給料をもらうのは当然の権利だが、事を起こすのには方法とタイミングというものがある」と主張する。

 また、浅野がアーセナルからパルチザンに移籍する際に代理人を務めたケビン・フィオナレッリは、「一方的な契約の終了はFIFAの規定により禁じられている。浅野の離脱によって引き起こされた現状を遺憾に思う。パルチザンは解決策を見つけ、選手を助けるために可能な限りのことをしてきた」と、クラブ側を擁護した(『ZURNAL.RS』より)。

 しかし、逆の見方をする関係者も少なくなく、パルチザンのレジェンドであるイバン・ゴラッツは、「軽薄で無責任な」今回の一件を「単純に、支払われるべきものが支払われなかったのであり、浅野が荷物をまとめて去ったことは驚きでも何でもない」と主張する。

 そして、給与遅配が常態化するなど、クラブ側の選手を尊重しない経営により、「浅野のケースが皮切りとなり、他の選手がこれに続く可能性がある」ことを懸念し、行政もまじえてクラブの経営システムを見直すべきだと訴えた(『SPUTNIK』より)。
 
 一方、同国メディアの『nova.rs』は別の見方を示し、「浅野の離脱がセルビアの選手の悲惨な運命と権利を暴露」と題した記事で、同国における外国人選手と国内選手で、行使できる権利に違いがあることを紹介。外国人選手の場合、給与遅配が2度目となった場合、15日間の警告後には契約解除を通告することができるが、「セルビア・サッカー連盟とクラブに支配された」国内選手はなす術なく、「外国人と同じ権利を持てることを夢見ることしかできない」のだという。

 浅野の行動については、クラブへの権利の行使は正当とするも、突然の退団には苦言を呈した。ここでは、2016-17シーズンにパルチザンに所属したブラジル人MFレオナルドが、自分にだけ給与が支払われた際にこれを他の選手に明かしたことでスキャンダルを巻き起こしたものの、かえってチームの一体感を生み出し、国内二冠を達成した例を引き合いに出し、チームメイトへの説明もなしに、SNS等だけで別れを告げるやり方は、この国の気質に合わず、余計な反感を買う行為だったと見ている。

 今回の一件が、セルビア・サッカー界にいかなる影響を与えるのかは、浅野の今後同様に注目したい。

構成●THE DIGEST編集部

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