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海外サッカー

元セレソンの“天才”パットが語った中国時代と現在。大成しなくても「僕は勝ち組だ」と断言できる理由とは?

THE DIGEST編集部

2022.06.02

相次ぐ怪我で満足にプレーできていなかったパットがやってきたのが中国だった。この時の彼は「人生において何が大切か」に気づき始めていたという。(C)Getty Images

相次ぐ怪我で満足にプレーできていなかったパットがやってきたのが中国だった。この時の彼は「人生において何が大切か」に気づき始めていたという。(C)Getty Images

 サッカー界に数多のスーパースターを輩出してきた“王国”ブラジル。そのなかには、特大の期待をされながらも実力を発揮しきれずにスター街道から外れていった選手も少なくない。アレッシャンドレ・パットもそのひとりと言えるだろう。

 ティーンエージャーの頃から高い注目度を誇っていた。17歳で南米王者インテルナシオナウの一員として出場した日本でのクラブワールドカップでは、チームの世界一に貢献。とりわけ国立競技場でのアル・アハリ戦で見せた肩でリフティングしながらのドリブルシーンは、鵜の目鷹の目のスカウト陣も目を丸くする技巧だった。

 そのポテンシャルは誰もが認めるところでもある。元ブラジル代表DFのカフーは17歳でミランに入団し、チームメイトとなったパットについて、米スポーツ専門局『ESPN』のインタビューで「しばらくして誰も練習でパットとの1対1をやりたがらなかった。みんなよく言ってたよ、『あいつは手に負えない』って。右にも左にも行けて、両足でシュートが打てて、フリーキックも蹴れて、ヘディングでゴールも決める。ターンも鋭く、どうやって捕まえればいいのか分からなかった」と絶賛したほどだ。

 ただ、これまた多くの早熟の選手がそうであるようにパットも怪我に悩まされた。一度治しても、ふたたび中長期の離脱を余儀なくされる筋肉系の故障によって、継続してプレーできなくなった。そして彼のキャリアは一線級から後退していった。

 そんなパットが2017年1月にビジャレアルから流れ着いたのが中国だった。『Players Tribune』で自ら語ったところによれば、「27歳になって自分を変えなきゃいけない。自分の運命は自分で決めなきゃいけないと思った」と、当時アクセル・ヴィツェル(ベルギー代表MF)やアンソニー・モデストが在籍してアジア・チャンピオンズリーグにも出場していた天津天海への入団を決意した。

「天津天海への移籍は何か啓示を受けたような感じがしたんだ。それまでの僕は大局を見る余裕なんてなかった。でも、ある時になって自分にとって大切なものは何かを考えるようになった。僕はメンタルヘルスと人間関係に焦点を当てるようになっていた。サッカーを完全に仕事として割り切れるようになったんだ。

 もちろんプレーは楽しんでいたけどね。だから、イタリアでは、最初の1年間はイタリア語を話すことはできなかったけど、中国では食事も文化もすぐに覚えたし、慣れたんだ。自分の部屋でご飯や麺を自炊したりもした」
 
 中国でのプレーはおよそ3年と長くはなかったが、「サッカーにはピッチ上のことだけでなく、もっと多くのことがあると理解できて、充実感があった」。そんな元天才児は、「中国での挑戦の後、ブラジルに帰る前の僕は自由を謳歌しようとロサンゼルスに行った。そして、完全に目が覚めた」と、あるエピソードを明かしている。

「そこには最高級のホテルに、高級車、そしてどんな時も最高なパーティーがあった。僕自身それを望んでいた。でも、そこである場所に行き着いたんだ。その場所では女の子が僕のすぐそばで鼻からコカインを吸っていた。そして突然、僕は『ここで何をしているのだろう』と思ったんだ。こんなのは僕が望んだ世界じゃないとね。空虚な世界だったんだ」

 その後、昨年2月にサンパウロからMLSのオーランド・シティに入団したパット。2015年に参入したばかりの新興クラブだったが、彼は「僕のキャリアに後悔はない。僕はまだサッカーが大好きだ」と語っている。

 セレソンのエースナンバーも背負った選手としては決して華々しいキャリアを送ってきたわけではない。それでも「もし人生がゲームなら、僕は勝ち組だよ」と言い切ったパット。現在32歳となった彼の“キャリア”は、いま始まったばかりなのかもしれない。

構成●THE DIGEST編集部

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