カリスマが掲げた世界制覇の夢は儚く散った。

　現地時間12月10日に開催されたカタール・ワールドカップ（W杯）の準々決勝で、モロッコと対戦したポルトガルは０-１で敗戦。ベスト８で敗退となった。

　大エースのクリスティアーノ・ロナウドを２試合連続で先発から外したポルトガルは、42分にユーセフ＝エン・ネシリの豪快ヘッド弾に先手を取られてしまう。後半は反撃に転じた欧州の雄だったが、守護神ボノを中心とした堅守を披露するモロッコを崩しきれず……。51分に７番を投入したが、最後までゴールはこじ開けられなかった。

　試合終了直後、決勝トーナメント１回戦でスペインを撃破した勢いそのままに勝ち上がり、アフリカ勢史上初のW杯ベスト４に進出したモロッコの面々は快哉を叫んだ。一方でショッキングな敗戦を受けたC・ロナウドは味方を気遣うこともなくいち早くピッチを退いた。そして、ロッカールームへと向かう通路で大粒の涙を流したのである。

　偉才の見せた悲痛な姿には世界でも衝撃が広がった。スペイン紙『Marca』が「彼のこんな姿を見るのはつらい」と記せば、英紙『The Sun』は「自身のキャリアを思い出してきっと胸が張り裂ける想いだったのだろう」と本人の胸中を慮った。
  　よもや敗北を受け、さっそく批判が集中しているのが、フェルナンド・サントス監督だ。負ければ終わりの大一番で、世界屈指の勝負強さを誇るカリスマを２試合連続でベンチスタートにさせたために、SNS上で「ロナウドのベンチが最大の間違い。理解できない！」「無能な監督の大失態」と批判が相次いだのである。

　しかし、68歳の名伯楽には、自身が下した“一大決心”への悔いなどない。モロッコ戦後の会見で「クリスティアーノはいつだって偉大な選手だ」とリスペクトを口にしたうえで、こう断言した。

「クリスティアーノの起用方法に後悔などはしていない。実際、スイス戦での我々は上手くやっていたからね。私は彼が本当に必要だというタイミングで使ったんだ。だから、そのことに後悔などはないよ」

　現在37歳のC・ロナウド。間違いなくキャリアの晩年にある彼が浮かべた涙が意味するのは、一部で囁かれている代表からの引退なのだろうか。

構成●THE DIGEST編集部

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