現地時間12月10日に行なわれたカタール・ワールドカップ準々決勝で、フランスは２-１でイングランドを下し、連覇に向けてまた一歩前進した。

　前回王者のゴールは、17分に炸裂したオーレリアン・チュアメニのノーステップでの強烈なミドル、そして78分にイングランドの猛攻をしのいだ後の反撃でアントワーヌ・グリーズマンの正確なクロスに合わせたオリビエ・ジルーのヘッド弾。いずれも素晴らしいものだった。

　一方で、試合前のフランスの最大の注目選手であり、イングランドにとっては最も警戒すべき存在だったキリアン・エムバペは、先制点の場面では左サイドからボールを運び、逆サイドにポジションを変える動きでプレーには絡んだが、今大会出場４試合目にして初めてゴールもアシストもなしで90分間を終えている。
  　ボールタッチ数40回、ファイナルサードでのパス16本、シュート１回、ドリブル４回（成功２回）は、いずれも今大会最少となった。だが、それはイングランドがこの背番号10に右SBのカイル・ウォーカーを専任のマーカーとして密着させただけでなく、ボール保有時には常に複数の選手が囲い込む守備を敢行したからに他ならない。

　英国の日刊紙『INDEPENDENT』は、「ウォーカーは“テスト”に合格した」との表現で、エムバペを抑え込むという仕事を果たしたと強調しながらも、「イングランドの問題は、フランスが複数の脅威を抱えていることだった」として、エムバペ以外にウスマンヌ・デンベレ、グリーズマン、ジルーの存在を挙げた。

　通常、彼らはエムバペの才能の引き立て役として、スペースを作る動き、効果的なラン、ボールを保持してゴールを提供する技術やフィジカルを披露している。しかし、この試合ではグリーズマンが２回目のアシストを記録し、ジルーがゴールを決めて、イングランドの抵抗を打破した。同紙は「エムバペがこの試合、ずっと“囮”だったのではないかと考えたくなった」と記し、記事の見出しも「エムバペは世界最高の囮だ」と打っている。