「2022-23シーズン、シャビ監督の下で４季ぶりにラ・リーガを制したバルセロナだが、カタルーニャの名門クラブは、かつてジョゼップ・グアルディオラ監督が率いていた頃に見せていた究極のパスサッカーを取り戻せるのか」

　こんな内容の質問が、東京の編集部から届いた。平たく言えば、多くの試合で80％以上のボール支配率を誇り、心地よくパスを回し、相手陣内を支配して、敵ゴールを攻め続ける。そういった風景を取り戻せるのかということになるが、簡潔に答えよう。

　シャビ監督は再現に励むはずだが、実現は難しいだろう。

　映画にたとえれば分かりやすい。一つの作品のリメイクを同じような系統の監督が撮り、似たタイプの役者を揃えたとしても、同じ作品はできないのだ。

　シャビ、アンドレス・イニエスタ、セルヒオ・ブスケッツ、そしてリオネル・メッシ。グアルディオラ監督時代のバルサにおいて、彼ら４人の役者は別格だった。この「偉大なるカルテット」はボールに愛されていた。彼らが止めて蹴るボールは、まるで命を吹き込まれるようだった。比類する選手は、そう簡単には見つけられない。
  　グアルディオラの後を、ティト・ビラノバ、タタ・マルティーノを経由して引き継いだルイス・エンリケは、シャビとイニエスタが年齢的に下り坂になっていたこともあり、ルイス・スアレス、ネイマールで前線を強化。「MSN」というウルトラⅭを取り入れ、その圧倒的な得点力によって強さを維持した。

　結局、フットボールは「選手ありき」なのだ。スタイル云々よりも、どんな選手がいるか。それで戦い方は決まる。

　L・エンリケ時代からバルサが道を誤った点は、攻撃に力を入れすぎてフィリッペ・コウチーニョやアントワーヌ・グリーズマンに湯水の如く大金を使い、守備をおざなりにしたところにある。メッシの攻撃力を高めようとしたのだろうが、的外れだった。結局、守備は崩壊し、メッシも孤立していった。