現地時間12月11日に行なわれたトルコ１部リーグの第15節、アンカラギュジュとリゼスポルの一戦の終了直後に、前者のファルク・コジャ会長が、試合を裁いたハリル・ウムット・メレル主審に暴行を働いた事件は、リーグの無期限延期に繋がるほどの大きな騒ぎとなった。

　後半アディショナルタイム７分にアウェーチームに追いつかれたことに激高した同会長が、ハーフウェーラインにいたメレル主審に詰め寄って左頬に強烈なパンチを見舞って昏倒させると、さらに他のクラブ関係者が倒れた主審の顔に蹴りを見舞うなどの悪質な行為に及んだ。

　コジャ会長は逮捕され、さらに翌日にはメレル主審とその家族に謝罪するとともに、現職を辞することを発表。一方、被害を受けた主審は、左目の出血や頭部にも外傷を負って病院に運ばれ、眼窩骨折と診断された。命に別状はないものの、現地メディアではベッドに横たわる彼の痛々しい姿が公開されている。
  　この事件を受けてトルコ・サッカー連盟（TFF）は、国内全てのサッカーリーグの無期限延期を発表し（後日新たな日程が発表）、公式サイトでは「我々は、この事件を引き起こした責任者全員を最も厳しい方法で処罰するため、法的および行政プロセスを厳重に遵守し、事件を追跡調査することを宣言する」と声明。また、メフメト・ブユケクシ連盟会長は病院を訪れてメレル主審を見舞うとともに、「この悲しい出来事は絶対に忘れられるべきではない。これはひとつのマイルストーンとなるべきだ」と語った。

　同国のレジェップ・タイップ・エルドアン大統領も「自国スポーツ界での暴力は許さない」と非難したこの件は、サッカー界に巣食う大きな問題が表面化した一例として各方面で深刻に捉えられており、FIFA（国際サッカー連盟）のジャンニ・インファンティーノ会長は「ピッチ内外を問わず、サッカーに暴力が許される余地はない。今回の件は全く容認することができない」「審判、選手、ファン、スタッフは、試合を楽しむために安全でなければならない」と訴えている。

　トルコといえば、古くから欧州カップで遠征してきたチームのサポーターに対して幾度も殺傷事件を起こしており、また国内でもクラブ間でのサポーターの対立が激しく、ここでも多くの暴力事件が発生している。さらに、ピッチ内外で選手や監督がターゲットとなるケースも多く、スタンドからの投下物での負傷、移動中のバスへの襲撃（運転手が銃撃を受けてあわや大惨事に）など、国全体の問題にもなっているという。