海外サッカー

ヘンダーソンのサウジへの「無謀な移籍」から欧州復帰までの経緯を英紙が回想! 専門メディアは代表的な「移籍の失敗例」を特集

THE DIGEST編集部

2024.01.19

ヘンダーソンは約半年でサウジを撤退。オランダに渡り、アヤックスと2年半の契約を結んだ。(C)Getty Images

 昨年1月のクリスティアーノ・ロナウドのアル・ナスル移籍を皮切りに起こった、スター選手たちのサウジアラビア大移動は、その天文学的な報酬額とともに大きな話題となり、一躍サッカー界の新たなムーブメントとして注目されることとなった。

 それから約半年が経ったところで、早くも中東からの撤退を決意する選手が現われた。イングランド代表MFのジョーダン・ヘンダーソンは、昨季終了後、12シーズンを過ごしたリバプールに1400万ユーロ(約23億円)の移籍金を置き土産にアル・イテファクの一員となったが、サウジプロフェッショナルリーグで17試合、キングカップで2試合に出場して計5アシストを記録したところで、挑戦は終焉を迎え、欧州に舞い戻った彼は、オランダのアヤックスに新天地を求めた。2年半の契約を結んでいる。

 サウジ行きが報じられた際、同国が同性愛を認めていないことから、人権の見地から大きな批判が巻き起こるも、自身の決断の正当性を主張して「中東でのサッカーを成長させる」と意気込んだヘンダーソンが、週給35万ポンド(約6600万円)の3年契約という破格の条件を提示され、かつてのチームメイトであるスティーブン・ジェラード(監督)とともに到達した中東をこれほど早く去る決意を下した経緯を、イギリスの日刊紙『Daily Mail』が振り返っている。
 
 そもそもこの33歳とその家族は、アル・イテファクの所在するサウジの都市ダンマームではなく、よりリベラルなバーレーン王国に居を構え、トレーニングやホームゲームのために55分かけて自動車通勤をしており、保守的な文化の中で生活することの難しさを窺わせていたという。また、英国から暑い砂漠の国でのプレーは彼の疲労を増大・蓄積させ、過去に経験のない病気での試合欠場を強いられたりもした。

 サウジ国民のサッカー熱の低さも、常にスタジアムが満員となる環境でプレーしてきた彼にとっては大きなショックだったようで、デビュー戦となったアル・ナスルとのアウェーマッチは1万4000人弱(スタジアムのキャパシティは2万6000人)の集客を記録したものの、その後の試合では4200人、2281人と減り、アル・リヤド戦では696人という、イングランド6部リーグのそれよりも少ないものだった。

 サウジ政府によって実質的に国有化されたアル・ナスル、アル・ヒラル、アル・イテハド、アル・アハリの4チームと、その他ではファンの盛り上がりに大きな差があり、また実力差も生まれている(実際、アル・イテハドを除く3チームが上位を独占)。アル・イテファクはリーグ19節終了時点で6勝7分け6敗の8位に沈んでいるが(首位アル・ヒラルからはすでに勝点28差!)、これもヘンダーソンを幻滅させた要因のひとつのようだ。
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