EURO2024開幕から2週間。大会はグループステージ(GS)を終え、決勝トーナメントに突入する。
ほとんどのグループがおおむね「順当」な結果に終わったなかで、サプライズと言えるのは、1年半前のカタール・ワールドカップで3位となり、FIFAランキングでもトップ10に入っているクロアチアの敗退、GS最終節でポルトガルを破ってグループ3位ながら初出場でベスト16に勝ち上がったジョージアの健闘、そしてフランス、オランダを尻目にグループDを1位で勝ち上がったオーストリアの躍進だろうか。
【動画】GS3節、オランダ対オーストリアのハイライトをチェック!
この項では、オーストリアの躍進ぶりをデータから読み解いていく。
●「レッドブル・スタイル」で躍進したオーストリア
フランス、オランダ、ポーランドと同居し「2強2弱」と見られていたグループDを1位で勝ち上がったのがオーストリアだ。
チームを率いるドイツ人監督ラルフ・ラングニックは、ボールロスト時に後退せずアグレッシブに前に出て即時奪回を狙う「ゲーゲンプレッシング」の発案者としても知られ、ユルゲン・クロップ、トーマス・トゥへル、ユリアン・ナーゲルスマンらドイツの多くの監督たちに影響を与えた名将だ。激しいデュエルとスピードに乗った速攻で相手を押し切る「レッドブル・スタイル」は、このオーストリアにも脈々と息づいている。
それを象徴しているのが、24チーム中ポルトガル(161)、スペイン(153)に次いで3番目に多い146というボール奪取数。タックル数とインターセプト数はともに24チーム中3位で、その合計数は1位。ボールに対するプレッシャーの速さと強さが、これらの数字に端的に表れている。
ただし、前に出てアグレッシブにプレッシャーをかけてデュエルを挑む守備戦術は、そのプレスを外された時に一気に攻め込まれるリスクも内包している。
事実、被シュート数40は24チーム中8番目に多く、枠外やブロックされたものも含めた全被シュートの累積xG(被xG=失点期待値)は5.55と、ジョージア(8.12)、ポーランド(5.88)、アルバニア(5.75)に次いで、下から4番目の数字だ。
それにもかかわらず4失点(うち1点はオウンゴール)で済んだのは、相手がシュートを決め損ねるなど多少の幸運も関わっていたことは確かだ。
しかしオーストリア躍進の秘密は、守備よりもむしろ攻撃に隠されている。総シュート数22は全体で下から6番目と少ないにもかかわらず、枠内シュート数17は上から4番目、シュート決定率27.3パーセントは全体トップと、作り出す決定機の質、そしてそれをゴールにつなげる決定力が際立って高かった。
実際、作り出した決定機の指標であるxGは3.84と24チーム中12番目に留まっているが、6得点を決めている。その差分+2.16はドイツ(+2.90)に次いで2位の数字。6.55xGに対して3得点しか挙げられなかったクロアチア(差分-3.55はワースト2位)とは好対照であり、それが最終的に明暗を分ける要素になった。
※xGというのは、一つひとつのシュートについて距離、角度、コース、GKやDFのポジション、シュートの難易度などから得点の可能性をAIが算出し、それを積算した数字。
文●片野道郎
【関連記事】2022年W杯3位のクロアチアが、GSで敗退した要因をデータから読み解く「明暗を分ける要素になったのは…」【EURO2024コラム】
ほとんどのグループがおおむね「順当」な結果に終わったなかで、サプライズと言えるのは、1年半前のカタール・ワールドカップで3位となり、FIFAランキングでもトップ10に入っているクロアチアの敗退、GS最終節でポルトガルを破ってグループ3位ながら初出場でベスト16に勝ち上がったジョージアの健闘、そしてフランス、オランダを尻目にグループDを1位で勝ち上がったオーストリアの躍進だろうか。
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●「レッドブル・スタイル」で躍進したオーストリア
フランス、オランダ、ポーランドと同居し「2強2弱」と見られていたグループDを1位で勝ち上がったのがオーストリアだ。
チームを率いるドイツ人監督ラルフ・ラングニックは、ボールロスト時に後退せずアグレッシブに前に出て即時奪回を狙う「ゲーゲンプレッシング」の発案者としても知られ、ユルゲン・クロップ、トーマス・トゥへル、ユリアン・ナーゲルスマンらドイツの多くの監督たちに影響を与えた名将だ。激しいデュエルとスピードに乗った速攻で相手を押し切る「レッドブル・スタイル」は、このオーストリアにも脈々と息づいている。
それを象徴しているのが、24チーム中ポルトガル(161)、スペイン(153)に次いで3番目に多い146というボール奪取数。タックル数とインターセプト数はともに24チーム中3位で、その合計数は1位。ボールに対するプレッシャーの速さと強さが、これらの数字に端的に表れている。
ただし、前に出てアグレッシブにプレッシャーをかけてデュエルを挑む守備戦術は、そのプレスを外された時に一気に攻め込まれるリスクも内包している。
事実、被シュート数40は24チーム中8番目に多く、枠外やブロックされたものも含めた全被シュートの累積xG(被xG=失点期待値)は5.55と、ジョージア(8.12)、ポーランド(5.88)、アルバニア(5.75)に次いで、下から4番目の数字だ。
それにもかかわらず4失点(うち1点はオウンゴール)で済んだのは、相手がシュートを決め損ねるなど多少の幸運も関わっていたことは確かだ。
しかしオーストリア躍進の秘密は、守備よりもむしろ攻撃に隠されている。総シュート数22は全体で下から6番目と少ないにもかかわらず、枠内シュート数17は上から4番目、シュート決定率27.3パーセントは全体トップと、作り出す決定機の質、そしてそれをゴールにつなげる決定力が際立って高かった。
実際、作り出した決定機の指標であるxGは3.84と24チーム中12番目に留まっているが、6得点を決めている。その差分+2.16はドイツ(+2.90)に次いで2位の数字。6.55xGに対して3得点しか挙げられなかったクロアチア(差分-3.55はワースト2位)とは好対照であり、それが最終的に明暗を分ける要素になった。
※xGというのは、一つひとつのシュートについて距離、角度、コース、GKやDFのポジション、シュートの難易度などから得点の可能性をAIが算出し、それを積算した数字。
文●片野道郎
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