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海外サッカー

「魅力的で、イケイケで、野心的なサッカーは観る者を惹きつける」首位マドリーとの勝点差拡大もバルサファンに失望感なし!「チームの戦いに興奮」「不安定なのは若さゆえ」

下村正幸

2025.01.22

このペドリ(左)やヤマル(右)らを中心に、バルサは質の高いサッカーでファンを魅了している。(C)Getty Images

このペドリ(左)やヤマル(右)らを中心に、バルサは質の高いサッカーでファンを魅了している。(C)Getty Images

 バルセロナが敵地でヘタフェと1-1で引き分け、またしても勝点を取りこぼした。会心の内容でレアル・マドリーを5-2で撃破し、スーペルコパ・デ・エスパーニャを制覇してから1週間も経たないうちの出来事だった。

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 直近8試合のラ・リーガの成績は1勝3分け4敗で、その間、積み上げた勝点は6。この引き分けで、首位のレアル・マドリーとの勝点差は7に広がった。まだシーズンは後半戦が始まったばかりだが、早く失速に歯止めをかけ、反攻に転じていかないと厳しくなってくる。

 通常ならファンの間で大きな失望感が広がるところだろう。序盤、破竹の快進撃を見せていただけになおさらだ。しかし現地では、奇妙な現象が発生している。コラムニストのラファ・カブレイラ氏がスペイン紙『エル・パイス』で端的に説明している。「クレ(バルサファン)は今の停滞期をいつか訪れるであろう黄金期への通過点であると考えている。だからチームの戦いに興奮し、将来への期待に胸を膨らませるというパラダイムシフトが起きている」

 若手中心のチームが垣間見せている無限の可能性への期待が、結果に対する失望を上回っているわけだが、このカブレイラ氏のいうパラダイムシフトを後押ししているのが、「就任後、短期間でチームを立て直し、スピード、エネルギー、戦術遂行力を飛躍的に高めたことを疑う者はいない」とスペイン紙『スポルト』の元編集長、エルネスト・フォルチ氏が評価するハンジ・フリック監督の手腕への信頼と、選手たちが見せる躍動感溢れるパフォーマンスだ。
 
 長年バルサを追うベテランジャーナリストのリカルド・トルケマダ氏も、「今シーズンのラ・リーガでバルサほど質の高いサッカーを長時間、見せているチームは存在しない。魅力的で、イケイケで、野心的なサッカーは見る者を惹きつける。だから試合に負けても誇りを感じ、またそのプレーを見たいと思うファンが増えている」と、スペイン紙『ムンド・デポルティボ』で称賛する。

 もちろん若さゆえに、試合運びの不安定さが目に付く。ヘタフェ戦も幸先よく先制しながら、完全に試合巧者の相手の術中にハマってしまった。トルケマダ氏も「チームは若く、未熟で、無意識ですらある。そのため自由奔放さが無責任な振る舞いに繋がり、それが時に勝負弱さを招くリスクになっている」と分析するが、その一方で「同時にこのチームはどこまでたどり着けるかという可能性を示している。あとはそれを習慣化させるだけだ。そしてその領域までの距離は決して遠くはない」と手応えを強調する。

 フォルチ氏は「ファンがワクワクしているのは、未来に希望を託しているだけではなく、目の前の試合を楽しみ、チームの戦いぶりに誇りを感じているからだ。もちろんタイトル獲得という成功が伴えばいうことなしだが、それがかなわなくても、ファンは今のパフォーマンスレベルを維持することと引き換えに、長い目で成長を見守ることを受け入れている」と思いを代弁する。

 だからこそフォルチ氏が訴えるのが、勝利至上主義にとらわれているジョアン・ラポルタ会長をはじめとするフロントが視点を変えることの重要性だ。確かに強豪には強いのに、格下相手だと勝ち切れない。長丁場のリーグ戦を戦い抜くにはコンスタントさに欠ける。しかし現地のファンはその先を見て、“フリック・バルサ”の未来に希望を抱いている。

文●下村正幸

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