2025年3月11日にミランとインテルがミラノ市に対し、スタディオ・ジュゼッペ・メアッツァ(通称サン・シーロ)とその周辺の土地の買収を申し出る提案書を提出した。
これは、現在は土地、建物ともにミラノ市が所有するサン・シーロを両クラブが買い取り、現スタジアムの隣接地にまったく新しい7万人収容のスタジアムを建設することを前提とした提案。新スタジアムが完成して移転が完了した後、現スタジアムは一部を残して解体され、スポーツ公園的な施設に転用される見通しだ。
11本の巨大な円柱に囲まれ赤い鉄骨で支えられた屋根が特徴的な外観を持ち、最大8万人を収容する現サン・シーロは、カンプ・ノウやサンティアゴ・ベルナベウ、オールド・トラフォードやアンフィールドと並んで、欧州サッカーを代表する歴史的スタジアムのひとつであり、都市ミラノを代表するモニュメントのひとつでもある。
しかし、今から100年近く前の1925年に作られたスタジアム躯体(現在の1階席部分)をベースに、55年に2階席、90年のイタリア・ワールドカップ開催時に外周部分の円柱と3階席と、それこそ屋上屋を重ねるように増築されてきた結果、商業施設としての収益性をはじめ、様々な面で現代のスタジアムに要求されるクオリティーを満たしていない根本的な問題を抱えてきた。
現サン・シーロがミラン、インテルという2大クラブの伝統と栄光を象徴する「歴史的建築物」であることは確かだ。だが、クラブの収益力がピッチ上の競争力を直接的に左右するフットボールビジネスの厳しい現実のなかで、両チームが今後も欧州のトップレベルに留まり続けるためには、より収益性の高いスタジアムを、しかも少しでも早く手に入れる必要があることは明白だった。
10年以上前からその認識を共有してきたミランとインテルは19年、現サン・シーロに隣接する敷地(現在は駐車場)に6万5000人収容の新スタジアムを建設し、その完成後に現スタジアムは取り壊して、一帯をスポーツ公園なども含む複合施設を持つ街区に再開発する「新サン・シーロ」構想を打ち出した。
当初の選択肢に、現スタジアムの大規模改築という案も含まれていなかったわけではない。しかし、以下に見るようにデメリットが多過ぎて現実的な選択肢にはなりえないというのが、両クラブの判断だった。
・すでに見たスタジアムの構造的な問題から、レアル・マドリーがサンティアゴ・ベルナベウで行なったように試合を開催しながら段階的に改築を進めることは難しい
・かといってバルセロナがカンプ・ノウの改修にあたって使ったモンジュイック(オリンピコ)のような、工事期間中の「避難先」も見当たらない
・クラブが必要とする商業施設としての機能性にもやはり旧躯体の構造的な問題から大きな制約がかかる
・コスト的にもスタジアム新設とほとんど変わらない予算が必要
R・マドリーとバルセロナは大規模改修による「歴史的建築物の保存」を選んだが、例えばイングランドではFAがウェンブリー、アーセナルがハイバリー、トッテナムがホワイト・ハート・レーンを解体して新スタジアムを建設することを選んでいる。つい最近もマンチェスター・ユナイテッドがオールド・トラフォードを捨てて新スタジアムを建設する構想を打ち出したばかり。その一方でアンフィールドの拡張を決めたリバプールのような例もあり、どちらを選ぶかは様々な条件に左右されるが、ミランとインテルにとっては新スタジアム建設のメリットの方が大きいことは明らかだった。
このような経緯から打ち出された19年の「新サン・シーロ」構想は、しかし、2年後の21年に基本計画レベルで一度はミラノ市と合意に達しながら、そこから実施計画に進む段階で複雑な行政手続きや一部市民による反対運動などの障害に直面して遅延が続き、22年には凍結に追い込まれてしまう。現在のスタジアム躯体の中核をなす2階部分が、1955年の竣工から70年目を迎える2025年に、公共建築物に対する文化財保護の対象に入るため、それ以降は取り壊しが不可能になるという規制の存在が決定的だった。
ミランとインテルはこの状況を受け、それぞれ独自に自前の新スタジアムを建設する方向へと舵を切り、ミランはミラノ市南東部に隣接する小自治体サン・ドナート・ミラネーゼ、インテルはミラノ市南部に隣接する小自治体ロッツァーノにそれぞれ候補地を絞って、具体的な計画策定に動き出した。
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これは、現在は土地、建物ともにミラノ市が所有するサン・シーロを両クラブが買い取り、現スタジアムの隣接地にまったく新しい7万人収容のスタジアムを建設することを前提とした提案。新スタジアムが完成して移転が完了した後、現スタジアムは一部を残して解体され、スポーツ公園的な施設に転用される見通しだ。
11本の巨大な円柱に囲まれ赤い鉄骨で支えられた屋根が特徴的な外観を持ち、最大8万人を収容する現サン・シーロは、カンプ・ノウやサンティアゴ・ベルナベウ、オールド・トラフォードやアンフィールドと並んで、欧州サッカーを代表する歴史的スタジアムのひとつであり、都市ミラノを代表するモニュメントのひとつでもある。
しかし、今から100年近く前の1925年に作られたスタジアム躯体(現在の1階席部分)をベースに、55年に2階席、90年のイタリア・ワールドカップ開催時に外周部分の円柱と3階席と、それこそ屋上屋を重ねるように増築されてきた結果、商業施設としての収益性をはじめ、様々な面で現代のスタジアムに要求されるクオリティーを満たしていない根本的な問題を抱えてきた。
現サン・シーロがミラン、インテルという2大クラブの伝統と栄光を象徴する「歴史的建築物」であることは確かだ。だが、クラブの収益力がピッチ上の競争力を直接的に左右するフットボールビジネスの厳しい現実のなかで、両チームが今後も欧州のトップレベルに留まり続けるためには、より収益性の高いスタジアムを、しかも少しでも早く手に入れる必要があることは明白だった。
10年以上前からその認識を共有してきたミランとインテルは19年、現サン・シーロに隣接する敷地(現在は駐車場)に6万5000人収容の新スタジアムを建設し、その完成後に現スタジアムは取り壊して、一帯をスポーツ公園なども含む複合施設を持つ街区に再開発する「新サン・シーロ」構想を打ち出した。
当初の選択肢に、現スタジアムの大規模改築という案も含まれていなかったわけではない。しかし、以下に見るようにデメリットが多過ぎて現実的な選択肢にはなりえないというのが、両クラブの判断だった。
・すでに見たスタジアムの構造的な問題から、レアル・マドリーがサンティアゴ・ベルナベウで行なったように試合を開催しながら段階的に改築を進めることは難しい
・かといってバルセロナがカンプ・ノウの改修にあたって使ったモンジュイック(オリンピコ)のような、工事期間中の「避難先」も見当たらない
・クラブが必要とする商業施設としての機能性にもやはり旧躯体の構造的な問題から大きな制約がかかる
・コスト的にもスタジアム新設とほとんど変わらない予算が必要
R・マドリーとバルセロナは大規模改修による「歴史的建築物の保存」を選んだが、例えばイングランドではFAがウェンブリー、アーセナルがハイバリー、トッテナムがホワイト・ハート・レーンを解体して新スタジアムを建設することを選んでいる。つい最近もマンチェスター・ユナイテッドがオールド・トラフォードを捨てて新スタジアムを建設する構想を打ち出したばかり。その一方でアンフィールドの拡張を決めたリバプールのような例もあり、どちらを選ぶかは様々な条件に左右されるが、ミランとインテルにとっては新スタジアム建設のメリットの方が大きいことは明らかだった。
このような経緯から打ち出された19年の「新サン・シーロ」構想は、しかし、2年後の21年に基本計画レベルで一度はミラノ市と合意に達しながら、そこから実施計画に進む段階で複雑な行政手続きや一部市民による反対運動などの障害に直面して遅延が続き、22年には凍結に追い込まれてしまう。現在のスタジアム躯体の中核をなす2階部分が、1955年の竣工から70年目を迎える2025年に、公共建築物に対する文化財保護の対象に入るため、それ以降は取り壊しが不可能になるという規制の存在が決定的だった。
ミランとインテルはこの状況を受け、それぞれ独自に自前の新スタジアムを建設する方向へと舵を切り、ミランはミラノ市南東部に隣接する小自治体サン・ドナート・ミラネーゼ、インテルはミラノ市南部に隣接する小自治体ロッツァーノにそれぞれ候補地を絞って、具体的な計画策定に動き出した。
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