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クラブW杯でも関係者たちを苦しめる猛暑、豪雨、雷…ブラジルメディアが「常態化した異常気象に適応する必要がある」とスポーツ界の大きな課題を指摘

THE DIGEST編集部

2025.06.27

パチューカとザルツブルクの試合では豪雨による中断があった。(C)Getty Images

 世界中から集った32クラブによってアメリカ各地で熱戦が繰り広げられているFIFAクラブワールドカップは、新たな興奮や興味を提供する一方で、大きな課題をサッカー界に突きつけてもいる。

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 そのひとつが、異常とも言える気象現象への対処である。近年は、猛暑、大雨、雷などの影響を受けるスポーツイベントは増えており、今大会ではパルメイラス対アル・アハリ、蔚山対マメロディ・サンダウンズ、パチューカ対レッドブル・ザルツブルク、ベンフィカ対オークランド・シティ、そしてボカ・ジュニオルズ対同じオークランド・シティで、雷雨、もしくはそのリスク回避のために、それぞれ試合開始の遅延、試合中断を余儀なくされた。

 ブラジルの総合メディア『Globo』は、今大会では雷雨の脅威がスタジアム内外での運営にも影響を与えており、選手団の練習、記者会見、移動に遅れが生じただけでなく、大会に関わるジャーナリストやFIFAのメンバーにも同様の被害が及んだことを伝えた上で、「サッカー界は常態化した異常気象に適応する必要がある」と訴えている。

 同メディアの記事では、ペルナンブコ連邦大学でスポーツと自然災害の関係を研究しているジエゴ・リマ氏が「クラブW杯では、選手たちが、氷のタンクに飛び込もうとしたり、ロッカールームで試合を観戦したりしている。今後、どのように対応していくべきだろうか? できるだけ長くロッカールームに留まり、決められた時間以上は外に出ないとか? 欧州ではベンチに寒さ対策が施されているが、果たして暑さに対してはどうだろうか?」と指摘する。
 
 また、今年初めに発表された北アイルランド・ベルファストのクイーンズ大学の研究によると、2026年の国際大会が開催されるスタジアムの約90%が、危険なレベルの高温に直面する可能性があるということで、来夏のW杯では全16会場のうちの14のスタジアムで試合中に28度を超えるとされている。

 他のスポーツイベントでも、2024年のパリ・オリンピックでは、冷却システムの整備、競技時間の柔軟な調整、放熱性に優れたユニホームや用具の導入などが採用され、さらにその3年前の東京五輪では、マラソン競技が暑さ対策のために、東京ではなく北海道の札幌市で実施された。同メディアは、「こうした適応策の事例は年々増えている。問題は、気象の異常性が今後はさらに頻繁に、そしてより激しくなることだ」と警告する。

 そして、オーストリア・ウィーン大学の地理学者であるセバスチャン・ファステンラート氏の、「テニスのオーストラリア・オープンからサッカーのブンデスリーガ、そして五輪に至るまで、多くの大規模なスポーツイベントで、現状に適応しなければならないことが認識されており、これはますます重要な課題となっている。当然のように起こる猛暑、豪雨、強風に適応するとともに、いかに被害を減らすかにも焦点を当てる必要がある。何より、観客や選手の安全が最優先されるべきだ」との主張を紹介している。

 同氏は、具体的な適応策として「日程の柔軟性の向上、より耐久性のあるインフラの整備、悪天候を考慮した新しい規則と規制、高温対策の向上」などを挙げたが、世界経済フォーラムのレポートで「2050年までに、気候変動によって1450万人が死亡し、12兆5000億ドル(約1800兆円)の経済損失が発生する」と警告されている地球上最大の問題に対して、サッカー界はいかに有効な手立てを打てるかが注目される。

構成●THE DIGEST編集部

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