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海外サッカー

オランダ代表MFのCBコンバートとも関連、スパレッティ新監督がユベントスに植え付けているコンセプト「異なるポジションで起用されているのは象徴的」【現地発コラム】

片野道郎

2025.11.29

スパレッティ監督就任後の5試合で2勝3分けのユベントス。セリエAでは7位、CLでは22位につけている。(C)Getty Images

スパレッティ監督就任後の5試合で2勝3分けのユベントス。セリエAでは7位、CLでは22位につけている。(C)Getty Images

 そのコープマイネルスのサイドCB起用とも関連しているのが、スパレッティが導入を進めている、ボール保持局面におけるポジションの流動性を高めるというコンセプト(とそれに基づくプレー原則)だ。

 近年のセリエAはハイプレス時はもちろん、自陣に引いた時にもマンツーマンに近い「人に基準を強く置いた」守備戦術を採用するチームが増えており、ポジショナルな立ち位置を守っているだけではボールを受けられなくなっている。ポジションを離れて動くことによって守備者を動かし、それによって生まれたスペースを別の味方が使うという形で、相手のバランスを崩すことが必要だというのが、ナポリやイタリア代表監督時代からのスパレッティの考え方だ。

 実際、ユベントスにおいても、左CBのコープマイネルスが流れの中で中盤に上がるのと入れ替わりに、右ボランチのロカテッリが最終ラインに落ちたり、右SBのアンドレア・カンビアーゾがピッチの内側に入ってくるのと入れ替わりに、右シャドーのウェストン・マッケニーがサイドに開く、さらにそれを追い越して右CBピエール・カルルが前線にオーバーラップするといった、流動的なポジションチェンジが見られるようになった。

 こうした形でポジションの流動性を高めながら、チーム全体のバランスを崩さずに維持するためには、複数のポジション/タスクを自然にこなせるだけでなく、周囲と連携しながらスペースを作る/使う戦術センスを備えたポリバレントな選手が必要になる。

 ボランチ、SB、WB、トップ下と幅広いポジションに適応できるマッケニー、左右両足を使えるためどちらのサイドでもプレーでき、さらに大外レーンだけでなく内側に入っても仕事ができるカンビアーゾが、スパレッティ就任後の全試合でスタメンに名を連ね、しかも試合によって異なるポジションで起用されているのは象徴的だ。

 
 スパレッティ就任後ここまでの5試合は、初陣となったセリエAのクレモネーゼ戦に2-1で勝った後、CLスポルティング戦(1-1)、セリエAトリノ戦(0-0)、フィオレンティーナ戦(1-1)と3試合続けて引分けに終わり、苦しみながら制したCLボデ/グリムト戦で2勝3分け。

 全体的に見て、試合内容はほぼ結果と見合ったものと言ってよく、まだチームが新監督の戦術を咀嚼し消化しつつある過程という印象だ。ただ、トリノ戦、フィオレンティーナ戦とも決定機そのものは作り出しており、引き分けという結果はそれを決め切れなかったことが原因という側面が強い。

 セリエA、CLともに順位的には「本来いるべき位置」から遅れを取っており、その点では監督交代に向けられた期待を十分に満たしていると言えないかもしれない。しかし、スパレッティという監督はネガティブな現状に対して即効性のある対策を施せるタイプではなく、むしろ自身のコンセプトをある程度の時間をかけてチームに浸透させていくタイプ。これまでのキャリアにおいても、それが軌道に乗るまである程度の時間は擁するが、一旦軌道に乗ればチームは明確なアイデンティティーを獲得するというプロセスを辿るのが常だった。

 CLボデ/グリムト戦の勝利、とりわけ主導権を握って攻勢に立ち続けた後半の戦いぶりが、指揮官のメソッドと戦術に対してチームが確信を深めるうえで重要なステップとなることが期待される。

文●片野道郎


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