この初戦をいいところなく落とし、試合終了後にはローマのスタディオ・オリンピコの観衆からブーイングの口笛を浴びたこともあって、マスコミの論調は一気に攻撃モードに突入。続くアウェーのトルコ戦は「これを落としたらグループ最下位でリーグBへの降格も濃厚、EURO予選のシード権も失うぞ」といった脅し文句のようなリードがスポーツ紙の紙面を飾った。
そのトルコ戦、マンチーニ監督はベルギー戦から8人を入れ替えたメンバーをピッチに送り出した。
GK
ジャンルイジ・ドンナルンマ(マンチェスター・シティ)
DF
マイケル・カヨデ(ブレントフォード)
ジョルジョ・スカルビーニ(アタランタ)
アレッサンドロ・バストーニ(インテル)
マッテオ・ルッジェーリ(アストン・ビラ)
MF
ダビデ・フラッテージ(ラツィオ)
サンドロ・トナーリ(トッテナム)
ニコロ・ファジョーリ(フィオレンティーナ)
FW
ジャコモ・ラスパドーリ(アタランタ)
フランチェスコ・ピオ・エスポージト(インテル)
セバスティアーノ・エスポージト(サッスオーロ)
今回は右SBのカヨデ、左ウイングのS・エスポージトという2人が初招集・初先発。最終ラインにはバストーニが戻ってスカルビーニとCBペアを組み、中盤はトナーリをアンカーに落として、右インサイドハーフに「MF最強のストライカー」たるフラッテージ、左にはテクニカルなファジョーリという異質な組み合わせが採用された。前線は、アッズーリ史上4組目となる兄弟のA代表同時出場(最後は2001年のフィリッポとシモーネのインザーギ兄弟)が実現。弟より遅い代表デビューとなったS・エスポージトも、本来はCFだがこの試合では左ウイング起用となった。
ベルギー戦との最も大きな違いは、3トップの左右ウイングのポジショニングだ。ケーンとカンビアーギは、大外で幅を取って孤立し、そこから単独で1対1を仕掛ける典型的なウイングの仕事を担っていた。それに対してこの試合のラスパドーリとS・エスポージト、とりわけ前者は、積極的にピッチの内側に入り込み、敵中盤ラインの前後に動いてボールに絡み、ポゼッションで数的優位を作り出すという、トップ下的な機能を果たした。システムを数字で表すならば、ベルギー戦が4-3-3だったのに対し、このトルコ戦は4-3-2-1、いわゆる「クリスマスツリー」に近い。
ピッチの幅を取るのは主に、右のカヨデ、左のルッジェーリという縦の推進力を備えた両SB。さらに中盤も、攻守のバランス感覚にも優れたトナーリをアンカーに据える一方で、パスワークと連携に優れたファジョーリを左インサイドハーフに置き、EURO2020当時のマルコ・ヴェッラッティ(アル・ドィハイル)のように「補助レジスタ」的な機能を委ねた。
これによってビルドアップとポゼッションの質が大幅に向上。土砂降りに近い雨でぬかるんだピッチという悪条件にもかかわらず、スムーズなビルドアップで前進し、ファイナルサードでも5人、6人をゴール前に送り込むと、ボールサイドに人数をかけて1タッチ、2タッチの細かいパス交換で相手を揺さぶり、最後は逆サイドからフリーでフィニッシュという、理想的な展開でゴールを重ねた。
9分にCKからバストーニが先制点を決めると、22分の2点目は、この試合の美点を凝縮したような内容だった。所属するブレントフォードでロングスローワーとしての能力を遺憾なく発揮しているカヨデが、自陣右サイドからのスローインで、30メートル以上を投げて直接のサイドチェンジに成功し、左から敵陣に進出。アタッキングサードでは7人が左サイドに集まって細かくパスをつなぎ、相手守備陣を引き寄せたところで、中央を経由して右に展開。右のペナ角やや内側でフリーになっていたカヨデのシュートはGKに弾かれたものの、そのこぼれ球に詰めたフラッテージが押し込んだ。
27分の3点目も、右サイドのスローインから(今度はパスをつないで)左にサイドチェンジし、ボールサイドに6人が絡んだコンビネーションで相手を引きつけ、中央から右に流してフリーのカヨデが仕留める、絵に描いたように瓜二つの展開。いずれの場面でも、左右のSBが敵陣深くまで進出して攻撃の最終局面に参加しており、後ろのケアはアンカーのトナーリと2CBの3人だけ(相手も前線に残っているのはCF1人だけなので、2CBが数的優位でケアしている)という非常に攻撃的な形である。
このトルコ戦での、大幅に説得力を増したアッズーリのパフォーマンスは、ベルギー戦の内容(結果ではなく)を踏まえてマンチーニ監督とスタッフが戦術に修正を加え、またそれに適した特徴を持った選手を適材適所で起用したことによって実現したものと言えるだろう。
そもそも今回のネーションズリーグは、W杯直後でどの国にとっても新たなサイクルのスタートであり、イタリアも含めて多くの国は監督を交代して新体制で臨んでいる。年に4回しか招集機会のない代表チームを限られた時間の中で構築していくうえでは、毎回実質数日間しか取れないトレーニング以上に、試合を戦う中で試行錯誤を重ねることが不可欠だ。
その観点に立てば、マンチーニ監督にとってもこの2試合は、目先の結果以上に、新たなチームの土台を築き固めるための試行錯誤の舞台だったと理解できる。ベルギー戦で採用された、左右のウイングが大外で幅を取るオーソドックスな4-3-3は、あくまでも基準となる出発点。その試合内容を踏まえて戦術的な原則に調整を加え、それに適した選手を起用したのがトルコ戦、というわけだ。そこで内容・結果ともにポジティブな成果を得られたとすれば、プロジェクトは着実に一歩前進した、と解釈していいのではないか。
少なくとも、そうしたバックグラウンドを無視して、目先の結果だけに振り回されて一喜一憂し、叩いたり持ち上げたりを繰り返すのは、あらゆる意味で非建設的な振る舞いであることは確かだ。ベルギー戦後に「負けた試合でのブーイングは当然。気にすることではない」と語っていたマンチーニ監督は、トルコ戦の後にも「この勝利の重さはベルギー戦の敗北の重さと同じ。重要なのは、自分たちにはいいプレーができるとわかったこと。まだ道は長い。これからも勝つこともあれば負けることもある」と落ち着きを保っている。
次は10月2日、アウェーでのフランス戦。10月5日にはホームのトルコ戦を控えるが、フランス戦が代表4連戦のハイライトと言えるだけに、結果以上にどんなアッズーリが見られるのか楽しみだ。
文●片野道郎
【現地発コラム】イタリア代表、第2次マンチーニ体制が船出へ 常連から10代のニューフェイスまで、招集候補メンバー総チェック
そのトルコ戦、マンチーニ監督はベルギー戦から8人を入れ替えたメンバーをピッチに送り出した。
GK
ジャンルイジ・ドンナルンマ(マンチェスター・シティ)
DF
マイケル・カヨデ(ブレントフォード)
ジョルジョ・スカルビーニ(アタランタ)
アレッサンドロ・バストーニ(インテル)
マッテオ・ルッジェーリ(アストン・ビラ)
MF
ダビデ・フラッテージ(ラツィオ)
サンドロ・トナーリ(トッテナム)
ニコロ・ファジョーリ(フィオレンティーナ)
FW
ジャコモ・ラスパドーリ(アタランタ)
フランチェスコ・ピオ・エスポージト(インテル)
セバスティアーノ・エスポージト(サッスオーロ)
今回は右SBのカヨデ、左ウイングのS・エスポージトという2人が初招集・初先発。最終ラインにはバストーニが戻ってスカルビーニとCBペアを組み、中盤はトナーリをアンカーに落として、右インサイドハーフに「MF最強のストライカー」たるフラッテージ、左にはテクニカルなファジョーリという異質な組み合わせが採用された。前線は、アッズーリ史上4組目となる兄弟のA代表同時出場(最後は2001年のフィリッポとシモーネのインザーギ兄弟)が実現。弟より遅い代表デビューとなったS・エスポージトも、本来はCFだがこの試合では左ウイング起用となった。
ベルギー戦との最も大きな違いは、3トップの左右ウイングのポジショニングだ。ケーンとカンビアーギは、大外で幅を取って孤立し、そこから単独で1対1を仕掛ける典型的なウイングの仕事を担っていた。それに対してこの試合のラスパドーリとS・エスポージト、とりわけ前者は、積極的にピッチの内側に入り込み、敵中盤ラインの前後に動いてボールに絡み、ポゼッションで数的優位を作り出すという、トップ下的な機能を果たした。システムを数字で表すならば、ベルギー戦が4-3-3だったのに対し、このトルコ戦は4-3-2-1、いわゆる「クリスマスツリー」に近い。
ピッチの幅を取るのは主に、右のカヨデ、左のルッジェーリという縦の推進力を備えた両SB。さらに中盤も、攻守のバランス感覚にも優れたトナーリをアンカーに据える一方で、パスワークと連携に優れたファジョーリを左インサイドハーフに置き、EURO2020当時のマルコ・ヴェッラッティ(アル・ドィハイル)のように「補助レジスタ」的な機能を委ねた。
これによってビルドアップとポゼッションの質が大幅に向上。土砂降りに近い雨でぬかるんだピッチという悪条件にもかかわらず、スムーズなビルドアップで前進し、ファイナルサードでも5人、6人をゴール前に送り込むと、ボールサイドに人数をかけて1タッチ、2タッチの細かいパス交換で相手を揺さぶり、最後は逆サイドからフリーでフィニッシュという、理想的な展開でゴールを重ねた。
9分にCKからバストーニが先制点を決めると、22分の2点目は、この試合の美点を凝縮したような内容だった。所属するブレントフォードでロングスローワーとしての能力を遺憾なく発揮しているカヨデが、自陣右サイドからのスローインで、30メートル以上を投げて直接のサイドチェンジに成功し、左から敵陣に進出。アタッキングサードでは7人が左サイドに集まって細かくパスをつなぎ、相手守備陣を引き寄せたところで、中央を経由して右に展開。右のペナ角やや内側でフリーになっていたカヨデのシュートはGKに弾かれたものの、そのこぼれ球に詰めたフラッテージが押し込んだ。
27分の3点目も、右サイドのスローインから(今度はパスをつないで)左にサイドチェンジし、ボールサイドに6人が絡んだコンビネーションで相手を引きつけ、中央から右に流してフリーのカヨデが仕留める、絵に描いたように瓜二つの展開。いずれの場面でも、左右のSBが敵陣深くまで進出して攻撃の最終局面に参加しており、後ろのケアはアンカーのトナーリと2CBの3人だけ(相手も前線に残っているのはCF1人だけなので、2CBが数的優位でケアしている)という非常に攻撃的な形である。
このトルコ戦での、大幅に説得力を増したアッズーリのパフォーマンスは、ベルギー戦の内容(結果ではなく)を踏まえてマンチーニ監督とスタッフが戦術に修正を加え、またそれに適した特徴を持った選手を適材適所で起用したことによって実現したものと言えるだろう。
そもそも今回のネーションズリーグは、W杯直後でどの国にとっても新たなサイクルのスタートであり、イタリアも含めて多くの国は監督を交代して新体制で臨んでいる。年に4回しか招集機会のない代表チームを限られた時間の中で構築していくうえでは、毎回実質数日間しか取れないトレーニング以上に、試合を戦う中で試行錯誤を重ねることが不可欠だ。
その観点に立てば、マンチーニ監督にとってもこの2試合は、目先の結果以上に、新たなチームの土台を築き固めるための試行錯誤の舞台だったと理解できる。ベルギー戦で採用された、左右のウイングが大外で幅を取るオーソドックスな4-3-3は、あくまでも基準となる出発点。その試合内容を踏まえて戦術的な原則に調整を加え、それに適した選手を起用したのがトルコ戦、というわけだ。そこで内容・結果ともにポジティブな成果を得られたとすれば、プロジェクトは着実に一歩前進した、と解釈していいのではないか。
少なくとも、そうしたバックグラウンドを無視して、目先の結果だけに振り回されて一喜一憂し、叩いたり持ち上げたりを繰り返すのは、あらゆる意味で非建設的な振る舞いであることは確かだ。ベルギー戦後に「負けた試合でのブーイングは当然。気にすることではない」と語っていたマンチーニ監督は、トルコ戦の後にも「この勝利の重さはベルギー戦の敗北の重さと同じ。重要なのは、自分たちにはいいプレーができるとわかったこと。まだ道は長い。これからも勝つこともあれば負けることもある」と落ち着きを保っている。
次は10月2日、アウェーでのフランス戦。10月5日にはホームのトルコ戦を控えるが、フランス戦が代表4連戦のハイライトと言えるだけに、結果以上にどんなアッズーリが見られるのか楽しみだ。
文●片野道郎
【現地発コラム】イタリア代表、第2次マンチーニ体制が船出へ 常連から10代のニューフェイスまで、招集候補メンバー総チェック




