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Jリーグ・国内

Jリーグ特任理事にサプライズ選出された、格闘技界の風雲児“アンディ秦”とは何者か

川原崇(THE DIGEST編集部)

2020.04.27

世界151か国で26億人の視聴者を誇るONE。ミャンマーの英雄アウンラ・ンサン(左)はスーパースターのひとりだ。(C)ONE Championship

世界151か国で26億人の視聴者を誇るONE。ミャンマーの英雄アウンラ・ンサン(左)はスーパースターのひとりだ。(C)ONE Championship

 ONEは2011年にシンガポールで設立された格闘技(マーシャルアーツ)団体で、新進気鋭ながら瞬く間に世界的な人気と知名度を得るに至った。いまや世界151か国で放送され、視聴者数は驚愕の26億人を誇る。昨年3月に開催された初の日本大会は成功裏に終わり、10月の大会でも8500万人を超える視聴者数を記録した。

 アジア戦略を推進したいJリーグにとっては、即効性のあるノウハウを数多有する超成長株だ。Jリーグが“アンディ”に求めるのも、まさにそうした側面となる。

「私がずっと携わってきたスポーツビジネスの国際的な知見。そこに加えて、アジアに強い格闘技団体の代表を務めている。国際進出を推進したいJリーグに対して、どんどん助言をしていってほしいという話はしてもらいました」

 まずはなにを置いても、「Jリーグを海外に知らしめる」のが至上命題となる。日本国内におけるJリーグは、もちろんいくつかの課題は抱えながらも、誕生からの27年間で理想的な成長と発展を遂げてきた。足場はしっかりしている。では、ここからどう海外へ打って出て、国際的なステータスを確立させていくのか。

 秦氏は「その考え方」を理解するのが、なにより大事だと語る。

「ONEがそうなんですが、国際化のベースをしっかり作れるかだと思うんです。欧米的な運営のところですね。マーケットをちゃんと理解し、ビジネス感覚がしっかりあって、かつ需要を見ながらの展開です。例えばONEのファンの約7割はeスポーツが好きなんです。これを踏まえたうえで、ONEはeスポーツの格闘技じゃなくて、eスポーツ自体にビジネス進出したんです。だからやっていることはeスポーツそのもので、本当に理に適ったアプローチですよね。マーケットの作り方も上手い。見せ方やヒーローの育て方とか、東南アジアはとくにそこにこだわっています。Jリーグももっと、ヒーロー化を進めたほうがいいなと感じています」

 狙うべきファン層はどこになるのか。秦氏の考えでは、サッカーのタイ・リーグが好きなファンにJリーグをぶつけて食い合うより、カジュアルな層に向けて発信するのがベターだと捉えている。コアなファンだけに照準を合わせても、パイは広がらないと見ているのだ。

「マル(円)の外にあえて行っちゃう発想ですよね。サッカーのマルの外には違うマルがある。そのコア層をつなげていったら意外とつながるかもしれないし、興味層が広がるかもしれない。タイにいるムエタイの有名人とチャナティップを掛け合わせて、その入り口から地場のヒーローを作っていくとか。異業種のほうが広がりやすいのかなって思うんです。ちなみにONEの視聴者の84.2%が、放送、オンライン、スタジアム観戦などなんらかの形でサッカーを視聴しているようです」

 
 昨年秋、日本国中がラグビー・ワールドカップに熱狂した。もちろん既存のラグビーファンもたくさんスタジアムに駆けつけたが、ブームを拡大させていったのは“にわか”とも呼ばれた、シンプルにスポーツが好きなファンたちだった。

 日本での認知度をさらに高めたいONEにとっても、Jリーグは最高のパートナーだ。秦氏は「日本での我々はまだこれからです。Jリーグの力をONEにつなげたいし、JのファンにももっとONEがアジアで培ってきた魅力を知ってもらいたいですね。サッカーのシーズンオフには他競技を見る。お笑いを見る代わりにONEを見てもらう。そういうパイの広げ方が大事かなと思っています」と、想いを募らせる。そして、「選手同士の交流があっても面白い。ONEには日本では無名だけど、アジアでは超有名な選手もいますから」と青写真を描く。
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