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日本代表

内田篤人が最後の2年半で残したもの。理想と現実のギャップに苦しんだ「背番号2」の笑顔が弾けたのは…

小室功

2020.08.28

言葉ではなく、背中で――。それが出来なくなった時、内田は潮時だと感じたという。写真:滝川敏之

言葉ではなく、背中で――。それが出来なくなった時、内田は潮時だと感じたという。写真:滝川敏之

 そんなもどかしい日々を過ごすなか、背番号2の笑顔がもっとも弾けたのが10月3日、ACL準決勝第1戦の水原三星戦だ。グループステージ同組だったこともあり、おおよその手の内はわかっていたが、開始6分間で、2点のビハインドを負うというよもやの展開。地元カシマスタジアムで、このままズルズルと崩れるわけにはいかない。

 混乱しかけたチームのベクトルを合わせるためにスタメン出場していた内田がとった行動とは、ピッチ上で緊急ミーティングを開くことだった。

「みんなの気持ちがバラバラになってしまうのがいちばん危険。これ以上、失点を重ねないよう、まずは守備を整えようと話した」

 戦い方の意思統一を図り、落ち着きを取り戻した鹿島は前半のうちに1点(オウンゴール)を返し、84分にセルジーニョが同点とする。さらに90+3分、起死回生の逆転ゴールが生まれ、第2戦に向けて弾みをつけた。

 得点者は、だれあろう、内田である。

 セットプレーからのこぼれ球にいち早く反応し、ダイレクトでねらう。相手に当たって、いったんは阻まれたものの、はね返ったボールが再び内田の足元へ。これを冷静にトラップし、素早く右足アウトサイドでけり込んだ。
 
 準決勝第1戦を3-2で勝ちきった鹿島は、第2戦も激しい打ち合いの末、3-3で引き分け、ついにファイナルへと進出した。

 ACL決勝に初めて勝ち上がった鹿島はイランの強豪、ペルセポリスと激突する。11月3日、ホームでの第1戦を2-0で勝利し、1週間後のアウェー戦に臨んだ。テヘランのアザディスタジアムは10万人の観衆で埋め尽くされていた。

 完全アウェーという異様な雰囲気のなかでキックオフされた試合は一進一退のまま時間が経過し、スコアレスドローでついにタイムアップ。鹿島にとって悲願のACL初制覇を成し遂げた。節目の20冠の瞬間でもあった。

 だが、そこに内田の姿はなかった。

「鹿島がずっと獲りたかったタイトル。それを達成したのは本当にうれしい。ただ、自分は決勝の舞台に(ホーム&アウェーともに)立っていないし、どこまで貢献できたのかなとは思っている」

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