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日本代表

内田篤人が最後の2年半で残したもの。理想と現実のギャップに苦しんだ「背番号2」の笑顔が弾けたのは…

小室功

2020.08.28

 このチームのために一生懸命に働く覚悟で復帰した内田にとって試合に絡めない現実がどれほどのものか。キャプテンを拝命した翌19年シーズンもJリーグに限っていえば、通算10試合の出場にとどまる。プレー時間は655分。わずかに、といっていいだろう。

 ピッチに立てなくても、できることはある。その一方で、もう潮時なのか。そんな葛藤が日増しに膨れ上がっていったであろうことは想像に難くない。

 言葉ではなく、背中で――。鹿島の先輩たちの振る舞いや立ち姿を見ながら、若き日の内田は成長してきた。年齢を重ね、さまざまな経験を積み、今度は自分が背中を見せる番だと考えていた。
 
 果たして、それができているのか。自問自答を繰り返す。

「昨シーズンが終わったとき、もう契約してもらえないかなと思っていたけれど、もう1年チャンスをもらえたなという印象だった。ただ、練習や試合で、ケガをしないように抑えながらプレーしている自分がいて、(永木)亮太や小泉慶、土居(聖真)くんとか、練習から100パーセントでやっている選手の隣に立つのは失礼だなと感じていた」

 鹿島の選手として、けじめをつけないといけない。もう迷いはなかった。

 8月12日、ルヴァンカップの清水戦(アウェー)のあと、鈴木満フットボールダイレクターに「今の自分ではチームの助けになっていない。このまま契約を解除して引退させてほしい」と、じかに伝えた。

 クラブの公式サイトを通じて引退が発表されたのは、そこから8日後のことだった。

 ヨーロッパやワールドカップなど、世界の第一線で活躍してきた経験と知識は鹿島にとどまらず、日本サッカー界全体の宝でもあるだろう。今後、どのような道を歩むにしても内田の一挙手一投足に注目が集まるのは確か。

 これだけのキャリアと人気を誇るレジェンドを放っておくはずはない。

取材・文●小室功(オフィスプリマベーラ)
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