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日本代表

タジキスタン戦で露呈した森保ジャパンの二面性。3ゴールを喜ぶより、迷走気味の前半を論じるべきでは?

清水英斗

2019.10.16

 そして0-0で迎えた後半、日本は動いた。違いのひとつは、鎌田大地と南野拓実が入れ替わったこと。1トップに南野、鎌田をトップ下とする縦関係を作るようになった。鎌田は相手を背負って窮屈だった前半とは異なり、相手アンカーの脇で積極的にボールを受け、息を吹き返すようなプレーを見せた。

 また、後半のより大きな違いは、両サイドバックの高さだ。ボランチの橋本や柴崎岳がサイドに張り出し、長友佑都や酒井宏樹を前に押し出すようにポジションを取った。

 長友と酒井が幅を取り、タジキスタンのブロックを横に広げることで、中島や堂安は中に入ってスペースを得られるようになった。この状態に持っていかなければ、若手三羽烏のクオリティー、特に堂安の良さは出ない。

 日本はダイナミックな展開を多用した前半とは異なり、中島、堂安、そして鎌田が、空いた中盤でショートパスを受け、それを起点にタジキスタンの攻略に至った。

 中盤を攻略し、押し込むことができれば、ボール奪取も楽になる。前半の守備はルーズで間延びしていたが、後半はラインを押し上げてコンパクトにし、奪われたボールの回収率も上がった。53分、66分に南野が決めた2得点は、どちらも日本がミドルサードでボールを奪った後の展開である。
 
 ビルドアップの改善→ボール奪取の改善。この好循環への転換が、後半に3得点を上げた攻勢のキーポイントだった。

 ただし、気になるのは、これらの対応が遅かったのではないか、ということ。

 もちろん、プレーしている選手たちが、タジキスタンを手強いと感じ、前半はあえてバランスを保つことにしたのなら、それもよしだ。うまくゲームマネージメントした、と評価もできる。慣れない人工芝とのフィット感もあるので、この辺りの戦略はプレーしている選手の肌感覚による。外部から正誤を判断するのは難しい。

 だが、そうだとしても、前半のうちに、もっとチャレンジできることはなかったのか。12番エルガシェフは中島ばかり見ているので、長友の前にスペースは空いている。もし、長友がもっと高い位置を取れば、前半からタジキスタンを困らせることができたはず。長友からボランチに一声かけ、リスクマネージメントさせればいい。

 その一方、前半の終わり頃、10分ほどの間には、柴崎が左サイドで高い位置へ張り出し、中島の周辺で攻撃に絡もうとする意図を見せた。保つのか、打破するのか。前半は長友にリスク管理の意図が強く働き、自重したポジションを保っていたとしても、こうした柴崎のチャレンジを見る限りは、ピッチ内の考え方はやや迷走気味だったようにも感じられる。

 特に前半、各選手は何を考えながらプレーしていたのか。どんな解決法があったのか。3-0の結果だけで終わらせてはいけない。良いときの日本代表は、限れた活動時間の中で、選手が詳細なコミュニケーションを取り、飽きるほど戦術を話し合ってきた。こうした日々の積み重ねが、強いチームを作るのだと思う。ラグビー日本代表ほどの合宿期間は取れないとしても、ならばせめて、より濃い時間を。

取材・文●清水英斗(サッカーライター)
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