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海外サッカー

「一番の鍵は日本戦であった」――クロアチア代表指揮官が明かした森保ジャパン攻略の苦悩。8強を懸けた激闘の舞台裏【現地発】

THE DIGEST編集部

2023.02.01

守備に重きを置いた日本を前に苦しんだ。そのなかでクロアチアを率いるダリッチは、絶対的司令塔のモドリッチを替える決断も下した。(C)Getty Images

守備に重きを置いた日本を前に苦しんだ。そのなかでクロアチアを率いるダリッチは、絶対的司令塔のモドリッチを替える決断も下した。(C)Getty Images

 クロアチアにとって日本戦は終わりのない拷問のような試合だった。誰もが何度も敗退を覚悟したに違いない。最大の武器であるルカ・モドリッチ、マルセロ・ブロゾビッチ、マテオ・コバチッチの中盤のラインは機能せず、最後までスポットライトは当たらなかった。

 もちろん、原因はこの日のモドリッチが最低なパフォーマンスであったのもある。だが、最大の要因は日本の中盤が巧みな連携を見せたからに他ならない。彼らは絶好のタイミングでデュエルをし、ピッチの3分の2ぐらいの位置でプレッシングをかけ、クロアチアが得意とする速い展開を断ち切ったのである。

 よくゴール前に人員を割き、ガチガチに守る戦術を「バスを停める」と言うが、日本はバスを停めただけではなく(もちろん、それが本来彼らの得意とするプレースタイルでもないからなのだが)、積極的に両サイドからのカウンターを仕掛け続けた。

 43分に生まれた前田大然の先制ゴールは、初めこそ偶然の産物だと思っていたが、改めて見直すと、クロアチア守備陣に混乱を招き、守護神のドミニク・リバコビッチを誘い出しているのが分かる。ゴール前では最強の彼だが、自分の守備範囲外となると弱い。そんなGKのウイークポイントを巧みに突いた1点だった。これらはクロアチアをよく研究していなければできなかったプレーであると思う。
 
 日本が優れている点は「決断力」「プレーの正確さ」「勝利への執念」「高いインテンシティ」「疲れを知らないこと」などさまざまにある。そのなかで何よりも特筆すべきは「臨機応変」であると筆者は考える。

 例えば、森保は、試合開始直後に3-4-2-1気味だった陣形を、相手の出方を見て4-5-1に変化させた。これは優れた判断だ。おかげでクロアチアのクリエイティブなプレーは通用せず、縦パスも通せなくなってしまった。

 一方で日本の選手たちはあまりポジションに縛られず自由に動きながらも、組織だったチームプレーは壊さなかった。そこに相当の練習を重ねてきた証拠を見た。また、左サイドバックのボルナ・バリシッチが守備面であまり機能していないと見るや、そこを重点的に攻める順応さも光った。

 ご存知の通り、最終的にクロアチアはPK戦の末に日本を破った。だが、この試合後に多くの母国メディアがつけた代表戦士たちへの採点は、あの試合でどれだけ苦しめられたかを物語っている。PK戦で3本のシュートストップを披露して殊勲者となった守護神リバコビッチ(10点)と、同点弾を決めたイバン・ペリシッチ(8点)には高得点が付いたが、あと面々は、ベスト8入りを決めた一戦であるにもかかわらず、ギリギリ及第点というありさまだった。
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