一昨年にイングランドのニューカッスルを買収するなど、サッカー界で存在感を増しているサウジアラビアだが、このところの活発な動きは、6月5日に同国のムハンマド・ビン・サルマン皇太子主導で始動した国内スポーツへの投資プロジェクト「ビジョン2030」と無関係ではない。
2030年までに、同国の様々なスポーツにおいてグローバルレベルでも活躍できるアスリートを育成することを目標としており、とりわけサッカーについては国内リーグを世界のトップ10に入るレベルに引き上げることを目指し、収益や市場価値を現状から飛躍的に上昇させることも目標としている。
その一環として、首都リャドの4クラブ、アル・ヒラル、アル・ナスリ、アル・イテハド、アル・アハリを国営化。サウジアラビアの政府系ファンドが各クラブの資本の75%を所有して経営権を握り、多額の投資を行なう。米国の日刊紙『The New York Times』によれば、少なくとも20人のワールドクラスの選手を招聘する予定で、最大10億ドル(約1400億円)の資金を調達しているという。
しかし、このプロジェクトから漏れたリャドのクラブであるアル・シャバブのハリド・アル・バルタン会長は、これによってさらにクラブ間の格差が広がると不満を露にしており、「財政状況で(この4クラブに)太刀打ちできない。私の車は日本車の小さなセダンなのに、なぜかランボルギーニやフェラーリとレースをすることを強いられている。これで負けても、私のせいなのか? 全く意味がないことだ」と語っている。
潤沢な資金によってワールドクラスの選手を多く集めることでリーグを盛り上げようという手法は、古くは米国の北米リーグ(NASL)、そして最近では中国スーパーリーグやインドスーパーリーグが思い出されるが、いずれも効果は一時的なものに終わっている。しかし、そういった前例にもかかわらず、サウジアラビアは世界に自国の影響力を拡大させるのに、強みを最大限に活かすことに躊躇はないようだ。
すでに、イタリアやスペインのスーパーカップを多額のスポンサーマネーで招聘して開催してきたアラブで最も裕福な国は、アフリカの強豪20チームによる「アフリカン・スーパーリーグ」でもスポンサーとして2億ドル(約280億円)の契約締結に近づいており、この大会の賞金はCAFチャンピオンズ・リーグの約4倍だという。
ブラジルの総合メディア『globo』は、こうした投資の最終目的は、2030年ワールドカップ招致というサウジアラビアの野望であり、実際に開催国が決定する2024年のFIFA総会において、この中東の大国はライバルにとって強力な競争相手になると予想している。
構成●THE DIGEST編集部
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しかし、このプロジェクトから漏れたリャドのクラブであるアル・シャバブのハリド・アル・バルタン会長は、これによってさらにクラブ間の格差が広がると不満を露にしており、「財政状況で(この4クラブに)太刀打ちできない。私の車は日本車の小さなセダンなのに、なぜかランボルギーニやフェラーリとレースをすることを強いられている。これで負けても、私のせいなのか? 全く意味がないことだ」と語っている。
潤沢な資金によってワールドクラスの選手を多く集めることでリーグを盛り上げようという手法は、古くは米国の北米リーグ(NASL)、そして最近では中国スーパーリーグやインドスーパーリーグが思い出されるが、いずれも効果は一時的なものに終わっている。しかし、そういった前例にもかかわらず、サウジアラビアは世界に自国の影響力を拡大させるのに、強みを最大限に活かすことに躊躇はないようだ。
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