ただ、それ以上の存在感を発揮したのが、その4年後だ。3バックシステムの左WBとして、ユーゴスラビア戦でユルゲン・クリンスマンの鮮やかなダイビングヘッドを引き出すクロスの他、普通にゴール前に入れると見せかけて切り返しからのカットインのシュートでチームの4点目を生み出すなど、初戦から大活躍を見せ、当時のホームグラウンドだったミラノ・サン・シーロでのオランダ戦(ラウンド・オブ16)では、右足でGKハンス・ファン・ブロイケレンを手玉に取る巧みなカーブシュートで決勝ゴールを奪ってみせた。
準決勝イングランド戦では、再び左足の弾丸FKが炸裂し、壁に当たってディフレクトしたボールはゴールに吸い込まれた。そしてアルゼンチンとの決勝、一方的に攻めながらもゴールが奪えずにいた85分に得たPKで、本来ならマテウスが蹴るところを、彼が後半から履き替えたスパイクに違和感を覚えていたことから、このウイニングゴールを託されたブレーメは、左足ではなく、右足で“PK阻止の名手”セルヒオ・ゴイコチェアですら絶対に届かない位置へ正確に流し込み母国に栄光をもたらした。
見た目は無骨なパワーファイターといった感じで、実際にパワフルなキックを武器にし、守備時には泥臭いプレーも厭わなかった一方で、アーティストのような繊細なテクニックを併せ持ち、戦術眼も優れていたブレーメは当時、間違いなく世界最高の左SB&WBであり、同大会の「影のMVP」とも呼ばれ、当然ながらベストイレブンにも選出された他、この年のバロンドールでは、マテウス、サルバトーレ・スキラッチ(イタリア代表/ユベントス)に次いで3番目に多い得票数を記録している。
奇しくも先月1月7日には、この90年W杯で監督としてチームを率いたフランツ・ベッケンバウアーが78歳で亡くなっており、ドイツ・サッカーは続けて偉大な人物を失ったことに悲しみを表わしたが、それは世界も同様であり、DFB(ドイツ・サッカー連盟)、バイエルン、カイザースラウテルンはもちろん、インテル、サラゴサ、さらにはブレーメと対戦した多くのクラブ、FIFA(国際サッカー連盟)からも弔意が示された。
言うまでもなく、彼の多くの仲間からもその死を悼むメッセージが寄せられているが、なかでもキャリアの最も輝かしい時期を長く共に過ごした盟友マテウスの「私がこれまで一緒にプレーした中で最高の選手だった」という賛辞と、サラゴサでわずか1年間だけ共闘した同クラブのレジェンドであるシャビエル・アグアドの「アンディは、右足と左足のどちらがより効果的なのかが分からない唯一の選手だった」というコメントが印象的である。
引退後は、カイザースラウテルン、ウンターハヒンクの監督、シュツットガルトでジョバンニ・トラパットーニ監督のアシスタントを務め、コメンテーターやクラブアドバイザー、実業家、投資家としても活動し、多額の借金を抱えてかつての仲間から救済されたことが報じられるなど、苦労も味わっていたというブレーメだが、その輝かしいキャリアに敬意を表すとともに、冥福を心から祈りたい。
構成●THE DIGEST編集部
【関連記事】78歳で逝去した皇帝ベッケンバウアーに国内外から弔意と感謝、賛辞が続々!「リーガの真の象徴」「攻撃的なDFを創り上げた」
準決勝イングランド戦では、再び左足の弾丸FKが炸裂し、壁に当たってディフレクトしたボールはゴールに吸い込まれた。そしてアルゼンチンとの決勝、一方的に攻めながらもゴールが奪えずにいた85分に得たPKで、本来ならマテウスが蹴るところを、彼が後半から履き替えたスパイクに違和感を覚えていたことから、このウイニングゴールを託されたブレーメは、左足ではなく、右足で“PK阻止の名手”セルヒオ・ゴイコチェアですら絶対に届かない位置へ正確に流し込み母国に栄光をもたらした。
見た目は無骨なパワーファイターといった感じで、実際にパワフルなキックを武器にし、守備時には泥臭いプレーも厭わなかった一方で、アーティストのような繊細なテクニックを併せ持ち、戦術眼も優れていたブレーメは当時、間違いなく世界最高の左SB&WBであり、同大会の「影のMVP」とも呼ばれ、当然ながらベストイレブンにも選出された他、この年のバロンドールでは、マテウス、サルバトーレ・スキラッチ(イタリア代表/ユベントス)に次いで3番目に多い得票数を記録している。
奇しくも先月1月7日には、この90年W杯で監督としてチームを率いたフランツ・ベッケンバウアーが78歳で亡くなっており、ドイツ・サッカーは続けて偉大な人物を失ったことに悲しみを表わしたが、それは世界も同様であり、DFB(ドイツ・サッカー連盟)、バイエルン、カイザースラウテルンはもちろん、インテル、サラゴサ、さらにはブレーメと対戦した多くのクラブ、FIFA(国際サッカー連盟)からも弔意が示された。
言うまでもなく、彼の多くの仲間からもその死を悼むメッセージが寄せられているが、なかでもキャリアの最も輝かしい時期を長く共に過ごした盟友マテウスの「私がこれまで一緒にプレーした中で最高の選手だった」という賛辞と、サラゴサでわずか1年間だけ共闘した同クラブのレジェンドであるシャビエル・アグアドの「アンディは、右足と左足のどちらがより効果的なのかが分からない唯一の選手だった」というコメントが印象的である。
引退後は、カイザースラウテルン、ウンターハヒンクの監督、シュツットガルトでジョバンニ・トラパットーニ監督のアシスタントを務め、コメンテーターやクラブアドバイザー、実業家、投資家としても活動し、多額の借金を抱えてかつての仲間から救済されたことが報じられるなど、苦労も味わっていたというブレーメだが、その輝かしいキャリアに敬意を表すとともに、冥福を心から祈りたい。
構成●THE DIGEST編集部
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