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海外サッカー

“格上”スイス相手に、イタリアは必然の完敗「招集メンバーの選択、起用法、戦術にブレ。最後まで落としどころを見出せないまま…」【EURO2024コラム】

片野道郎

2024.06.30

戦力にそぐわない戦術を採用したスパレッティ監督は、それを機能させることができなかった。(C)Getty Images

戦力にそぐわない戦術を採用したスパレッティ監督は、それを機能させることができなかった。(C)Getty Images

 時間不足についても、昨年夏にロベルト・マンチーニ前監督の電撃辞任を受けて急遽就任した経緯があること、それから大会まで、直前合宿も含めてわずか5回しか招集機会を持てなかったことは事実。しかし、今大会の招集メンバー選択に始まり、4試合を戦う間に見られた選手起用や戦術まで、指揮官がその時々に下してきた決断に「ブレ」が見られたこともまた確かだ。

 26人のメンバー選択にあたって、リッカルド・オルソリーニ(ボローニャ)、マッテオ・ポリターノ(ナポリ)という左利きの「逆足ウイング」2人を外し、その代わりにDFを計10人も招集したのは、3月の米国遠征で初めて試した3バックの布陣(3ー4ー2―1)が前提であるように見えた。

 ところが、いざ開幕してみると、アルバニアとの初戦でピッチに送り出したのは4バック。しかもフェデリコ・キエーザを右サイドに配した4ー3ー3の布陣だった。同じメンバーで戦ったスペイン戦で手も足も出ない惨敗を喫すると、勝ち上がりが懸かったクロアチア戦では3バックの3ー5ー2にがらっと切り替える。ところがこのスイス戦では再び4ー3ー3に戻した末、スペイン戦と同じく高強度のハイプレスに攻撃を封じられて完敗した。

 招集メンバーの中でも、3バック採用時の右WBとして際立った縦の推進力に期待して招集したラウル・ベッラノーバ、多めに招集したCBのアレッサンドロ・ブオンジョルノ、フェデリコ・ガッティに出番がなかった一方で、サイドアタッカーには右サイドに人材を欠き、左でより持ち味を発揮するキエーザを終始右で起用する結果になるなど、戦力的に見てちぐはぐな部分も少なくなかった。

 26人の陣容は3バックをメインで使う想定で選んだにもかかわらず、ピッチに送り出したのは4バック。しかもその布陣で狙ったポゼッション志向の攻撃サッカーができず、それに代わる「プランB」も思ったように機能しないなど、結局招集メンバー選択の時点から始まった「ブレ」を収束させる落としどころを見出せないまま終わった感は否めない。
 
 戦力的に見て、スペインやスイスのハイプレスをかわしてボールを支配し、主導権を握って試合を進めるために必要なクオリティーが欠けていた、という議論もできなくはない。もし、そうだとしても戦力にそぐわない(あるいは少なくとも限られた時間の中でチームに浸透させることが難しい)戦術を採用し、それを十分に機能させることができなかったという点で、やはり指揮官の責任は重いと言わざるをえない。

 とはいえ、この敗退の責任を問う形でスパレッティ監督を解任すべきか、ということになると、少なくとも筆者の答えはNOだ。

 代表監督という、クラブの監督とはまったく異なる状況に直面して、1年足らずという限られた準備期間を経て臨んだこのEUROは、明らかに失敗だった。しかし、この「貴重な」経験からの学びをベースに、代表監督としての仕事のあり方を見直しつつプロジェクトを組み直し、これからの2年間でチームを再構築してワールドカップを目指すことができると考えれば、新しい監督を迎えてゼロから再スタートするよりはずっといい結果が期待できることも確か(そもそも、ふさわしい次期監督が見当たらない)。

 監督としての手腕と見識に疑問はないだけに、それを信頼して引き続きイタリア代表の指揮をスパレッティに委ねるのが、現時点における最良の選択ではないだろうか。

文●片野道郎

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