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海外サッカー

「信じられない勝利」10人のユベントスがCLライプツィヒ戦で逆転できた理由「モッタ監督はユーベでもボローニャ時代のプロセスを――」【現地発コラム】

片野道郎

2024.10.05

1ー1で迎えた59分にディ・グレゴリオの退場で10人となったユベントス。それでもモッタ監督(写真)は撤退守備で引き分けを狙うのではなく、前線からのプレッシャーを継続させて逆転勝利を呼び込んだ。(C)Getty Images

1ー1で迎えた59分にディ・グレゴリオの退場で10人となったユベントス。それでもモッタ監督(写真)は撤退守備で引き分けを狙うのではなく、前線からのプレッシャーを継続させて逆転勝利を呼び込んだ。(C)Getty Images

 ところがユベントスは59分、GKミケーレ・ディ・グレゴリオが、エリア外でのハンドでレッドカードを受け退場。さらに再開後のFKがドグラス・ルイスの手に当たってPK判定となり、先制点を決められたシェシュコにネットを揺らされて1ー2。10人で1点を追う展開を強いられた。

 モッタ監督は1人少ないにもかかわらず、前線からマンツーマンで相手のビルドアップにプレッシャーをかける前進守備を継続。勇気ある決断を下して、チームの士気を煽る。そのアグレッシブな姿勢が実ったのは、シェシュコのPKから3分後の68分だった。

 執拗なプレッシングから敵陣右サイドでボールを奪って素早く反撃に転じると、ヴラホビッチが中央右寄りから左足でファーポスト際に20メートルのシュートを決めて2ー2。さらに82分、ウェストン・マッケニーが相手のカウンターアタックを捨て身のタックルで食い止めたところから、CBピエール・カルルが果敢にドリブルで持ち上がると、そこからのパスを受けた途中出場のフランシスコ・コンセイソンが、立ちはだかるDFをドリブルでかわして狙いすましたシュートをゴール左隅に流し込み、1人少ない10人による信じられない逆転劇を完遂した。

 指揮官は試合後のインタビューでこう語っている。

「最初の1分から、選手たちは積極的に前に出ることで相手にダメージを与えられると確信しているように見えた。その確信は後半に入ってむしろ強まったし、それは10人になっても変わらなかった。だとしたらどうして後退する必要があるのだろうか。我々は前に出続けることで自分たちのサッカーを貫いた。どんな時にも自分たちは相手を上回ることができると信じ続けなければならない。今日はそれができた」
 
 モッタ監督はボール支配を通して主導権を握りながらも、前がかりになり過ぎるリスクを冒すことなく、攻守のバランスを保って効率的に勝利をもぎ取ることをよしとする信条の持ち主。セリエAでは開幕2連勝の後0ー0の引き分けが3試合続いたことで、これではベタ引きの堅守速攻に徹していたマッシミリアーノ・アッレーグリ前監督時代と変わらない、という批判も受けていた。

 確かにモッタは守備に重きを置くタイプの指揮官ではある。しかし同時に、その守備は単に相手の攻撃を食い止める手段ではなく、攻撃の機会を作るための重要な手段でもあると位置づけており、相手と状況に応じてゾーンの4ー4ー2ブロックによるミドルプレスと、マンツーマンのハイプレスを効果的に使い分けてきた。この試合では、後者に力点を置くことによって相手に対して優位に立てるという確信をチームと共有し、まさにその確信を通して逆転勝利をもぎ取ったと言うことができる。

 1人少ない10人という困難な状況にもかかわらず、戦術的にもメンタル的にも最後まで受動的にならず、能動的かつ攻撃的に前に出る姿勢を貫くというのは、アッレーグリ前監督時代には考えられなかったことだ。モッタは過去2シーズン率いたボローニャでも、まず守備戦術を確立することを優先し、そこから徐々にチームの重心を上げていくことで、「ゴールを守る守備」から「ボールを奪う守備」へ、そしてさらには「チャンスを作るための守備」へと進化させていった。ユベントスもその同じプロセスを着実に歩み始めている。

文●片野道郎

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