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海外サッカー

“メッシ無き代表”をいかに想像するか。W杯制覇を狙うアルゼンチンが進めた「10年プロジェクト」の実像【現地発】

チヅル・デ・ガルシア

2022.11.01

アルゼンチンで脈々と受け継がれてきた10番の系譜。そのなかで偉大なるマラドーナの「正当後継者」としてメッシは国民の期待を一身に背負ってきた。(C)Getty Images

アルゼンチンで脈々と受け継がれてきた10番の系譜。そのなかで偉大なるマラドーナの「正当後継者」としてメッシは国民の期待を一身に背負ってきた。(C)Getty Images

 かつてアルゼンチンのある社会学者が「この国の人々は常に偶像を必要としている」と話していたことがある。いかなる分野でも、アルゼンチン人が求めるものは思想(アイデア)ではなく偶像(アイドル)だという説だ。その説が正しいとすれば、AFAが「個人よりもアイデア」を重視するプロジェクトを進め、そこからスポーツ的な成功をおさめても、メッシ不在によって人々の心の中に生じる傷を癒せるのは新たなアイドルしかいない、という結論になる。
 
 1994年の夏にディエゴ・マラドーナがアルゼンチン代表を去ってからメッシの登場までに要した時間は11年。その間に我々は、ガブリエル・バティストゥータやフアン・ロマン・リケルメ、パブロ・アイマール、ハビエル・サビオラ、カルロス・テベスといったアイドルのプレーを堪能してきた。今のチームにもラウタロ・マルティネス、ロドリゴ・デ・パウル、レアンドロ・パレデス、リサンドロ・マルティネスといった人材が揃っている。アルゼンチン代表が魅力的なチームであり続けるのは間違いない。そして10年後にはまた世界に名を轟かすスターが誕生するのかもしれない。

 だが、マラドーナが未だに「唯一」な存在であるように、アルゼンチンの人々にとってもメッシは「永遠」であり続けるだろう。批判を称賛に変えた不屈のヒーローとして。そして、28年間も無冠だった国に南米王者のタイトルをもたらした偉大なキャプテンとして。

文●チヅル・デ・ガルシア
Text by Chizuru de GARCIA

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