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海外サッカー

「ファン・ダイクの身体は…」プレミアリーグに顧客を抱える個人トレーナー・木谷将志が語るトップアスリートの「骨格、筋肉、ポテンシャル」【直撃インタビュー後編】 

松澤浩三

2020.02.20

怪我が少ない吉田の凄いところは「準備力」だと木谷トレーナーは語る。 (C)Getty Images

怪我が少ない吉田の凄いところは「準備力」だと木谷トレーナーは語る。 (C)Getty Images

WSD:難しいと思いますが、より具体的にファン・ダイクの凄さを解説していただけますか?

木谷氏:感覚的な話になってしまうので、凄さを表現するのは難しいんですよね(苦笑)。ファン・ダイクは、筋トレをあまりしないそうです。それであそこまで仕上がっている。〝エグい〞ですよね。日本人だったら、ありえません。まあ、そこは生物学的に仕方ない部分ですが。なんと言いますか、出来上がっている身体なんですよ。僕が選手に触れるのは、体調が悪かったりコンディションが良くなかったり、あるいは怪我をしている時が多くなります。その状態からどう能力やパフォーマンスを上昇させてあげられるか、そこに注力して施術します。触ってみたときに「この選手の真の能力はまだ30パーセント眠っている」と感じることもありますが、ファン・ダイクの場合は引き出せる余地があまりに少なかった。感覚的な話になってしまいますが。もちろん、僕らトレーナーが手を加えれば多少良くなるとは思います。ただ、高が知れているでしょうね。悔しいですけど。何もせずしてトップレベルのパフォーマンスを出せる選手。とても稀なタイプです。過去に診てきたどの分野のプロスポーツ選手、アスリートよりも、ずば抜けていました。残念ながら移籍してしまったので、治療する機会がなくなってしまいましたが。

WSD:吉田選手は怪我がないほうですが、身体の質はどうですか? フィジカル系のトラブルが少ないのは、コンディション作りやケアをしっかりしているからでしょうか?

木谷氏:怪我はたしかに少ないですね。ただ、質という点では、トップの中のトップの筋肉だとは感じません。麻也くんの凄いところは、「準備力」です。プロ意識がとても高い。他の選手と比べ物にならないくらいに。
 
WSD:昨年4月には実業家ビザを取得して、11月にはロンドンの日本人治療院「ナチュラル・クリニック」の共同経営権も取得しました。今後は英国に腰を据えて活動していきますが、将来的な展望を聞かせてください。

木谷氏:いろいろと考えはあります。クリニックはこれから改装して、内容面ももっと充実させていきたいですね。対象としている顧客は日本人と現地の方の両方ですが、古いお店なのでお客さんはすでについています。日本人の方であれば、安心感を与えられるし、ローカルの人には日本人は良い治療ができるとアピールできる。半年後くらいに、完全リニューアルオープンを目指しています。

WSD:前途洋々ですね。

木谷氏:あとは、スタッフ不足を解消できれば……。例えば、ワーキングホリデーとかで新たに海外での挑戦を目指す若い人たちにも枠を広げて、呼び掛けたいと考えています。まずは「トップアスリートを治療する日本人がいる」という事実を知ってもらいたい。(トレーナーとしての)修行を積めるし、英語も勉強できる。そういうチャンスがあることを分かってもらいたい。いずれは欧州中にクライアントを増やして、様々な場所にトレーナーを派遣できればと、多角的に考えています。もっと大きな青写真は、僕の施術、日本の技術を広めていくこと。欧州のフィジオやトレーナーを対象に、セミナーを開いたりして。もっと浸透すれば選手の怪我が減り、パフォーマンスが良くなる。一般人であれば腰痛が治り、肩こりで悩む人が減る。素晴らしくないですか? サッカーに限らず、様々
な分野のアスリートのためにトレーナーを派遣できるようにもしていきたい。そして将来的には、顧客の情報をデータベース化し、より質の高いサービスを提供し、各団体とうまく連携しながら、総合的にアスリートを支えていける会社にしたいと考えています。日本人選手が世界で戦える、活躍できる環境を作っていきたいですね。

PROFILE
きたに・まさし/ 三重県立名張西高校(現名張青峰高校)卒業後に大阪府内のスポーツトレーナー専門学校へ進学。修学後は柔道整復師の国家資格を目指しながら、数々のプロアスリートの治療を担当する北川彰良氏のもと、神奈川県相模原市の慈佑館での下積み期間を経て、2012年より同館の愛知県名古屋分院を任される。30歳で一念発起して独立、吉田麻也を含む複数のプロアスリートと専属トレーナー契約を開始。今年4月に渡英して現在に至る。1985年6月20日生まれ、三重県出身。

取材・文●松澤浩三

※『ワールドサッカーダイジェスト』2020年2月6日号より転載
 

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