今季だけでツアー４勝を挙げた男子テニス世界ランキング11位のアレクサンダー・ブブリク（カザフスタン／28歳）が、先日出演したロシアのYouTubeトーク番組『First＆Red』で元世界王者ノバク・ジョコビッチ（セルビア／現４位）との“興味深いエピソード”を明かしている。

　それは昨年４月の「モンテカルロ・マスターズ」（モナコ／クレーコート／ATP1000）での出来事。当時世界17位だったブブリクはラケットにナチュラルガット（動物の腸で作られた天然素材の糸）を張っていたのだが、それが「湿気や暑さ、寒さに敏感に反応してしまう」ため、打感が安定せず思うようにプレーできなかったという。

「悪夢のような」初戦敗退を喫して落ち込んでいたところ、ブブリクは同大会に参戦していたジョコビッチを見かけ、ストリングの調整方法について助言を求めた。すると「彼ははやるべきことを細かく正確に説明し始めた」そうだ。

「『練習ではこのテンションで試して、それからはこのテンションに変えて...』というふうに、親切に重要なポイントを全て教えてくれたんだ」
  　ちなみに四大大会24勝のレジェンドにアドバイスを求めた理由についてブブリクは、「ノバクがそういうことに関して天才的なのを知っていたし、自分が彼にとって直接のライバルにはなり得ないこともわかっていた」からだと説明。実のところ両者はツアーで１度しか対戦したことがない（ジョコビッチの１勝）のだが、偉大な王者に対するリスペクトがブブリクの行動を後押ししたようだ。

　ところがその直後、ジョコビッチと同格かつ「直接のライバルとも言える選手」がブブリクに近づいてきた。ジョコビッチが何と言っていたかを執拗に聞かれ、ブブリクがそれに簡単に答えると、その後も「他には？」と詰め寄られたそうだ。番組内ではその選手の名前は明かされなかったが、「ノバクも彼にはストリングの情報を教えなかったと思う」とブブリクは率直に語っている。

　軽妙な語り口とは裏腹に、常にどこかで個人競技ならではの“情報戦”が繰り広げられていることを感じさせるエピソードだった。

文●中村光佑

【画像】ブブリクをはじめ、2025全仏オープンで躍動した男子トップ選手たちの厳選フォト

【関連記事】“お騒がせ男”ブブリクがATPからの処分に猛反発！ 「彼らは自分のルールも知らない。ばかばかしい」＜SMASH＞

【関連記事】テニスギア講座／高価なナチュラルガットはいったい何がいいのか？ シンセティックとの違いに迫る＜SMASH＞