この結末を、誰が予想し得ただろうか――?
世界4位が、世界2位を破ったという結果だけを見れば、そこまでの事件には見えない。ただ、その世界4位が38歳であること。世界2位は、この2年間でグランドスラム(四大大会)を4度制した24歳であること。ここ2年半の両者の直接対決は、その24歳が5連勝中であること。さらに、今大会の準々決勝で38歳は2セットを失い、相手のケガで棄権するまで敗色濃厚だったこと......。
それら種々の要素を勘案すれば、若い世界2位が圧倒的に有利なのは、揺るがない事実に見える。
しかし、その世界4位の38歳が、24回のグランドスラム優勝を誇り、『GOAT(Greatest of All Time=史上最高)』と謳われるノバク・ジョコビッチとなれば、その限りではないだろう。
テニス四大大会「全豪オープン」準決勝のシナー対ジョコビッチ。ジョコビッチが第1セットを失い、第2セットは取り返すものの第3セットも落とした時、彼の勝利を信じた者は少なかっただろう。
だがジョコビッチは、「自分を信じていた」という。そしてここから、全盛期を彷彿させるプレーを披露した。
シューズの摩擦音を響かせながら、ベースラインから下がることなく左右に走り、あらゆるショットを深く、鋭く打ち返す。攻守一体のその姿は、さながら移動型要塞だ。
第4セット、そしてファイナルセットと試合が進むにつれ、ジョコビッチの表情は冴え冴えとし、ポイント間にベンチと会話を交わすこともなく、全てが洗練されていく。ファイナルセットで3連続ブレークポイントを握られた時も、そして最初のマッチポイントをシナーの脅威のプレーで凌がれた時も、彼が纏う静謐なまでの集中力に揺らぎはない。
2度目のマッチポイントで、バックのクロスラリーの交換の末に、最後はシナーのショットがラインを割る。シナーと試合後の握手を終えたジョコビッチは、両手を天に広げ、大歓声を全身で浴びながら、コート上に両ヒザをついた。
史上最多のグランドスラム優勝を誇り、合計428週世界1位に座した彼が、なぜ今もここまで自分を駆り立てることができるのか――?
その答えは、彼がかつて口にした、次の諺にあるのかもしれない。
「丘を上る狼は、頂点にいる狼よりも飢えている」
これは、彼が無敵の王者だった10年前の全豪オープンを制した時の言葉。当時の彼は、その真理を知るからこそ、「自分は、他者の倍の努力をしなくてはいけない」と言っていた。
そのジョコビッチ自身が今、「丘を上る飢えた狼」となっている。もっとも彼は数日前の会見で、「今のあなたは、アルカラスとシナーを追う立場にいるが」と水を向けられた時、不快感を露わにもした。
「24度グランドスラムで優勝している者に対し、失礼な物言いではないか」......と。
シナーに勝利した後の会見では、「もうジョコビッチは引退すべきだ、あるいは終わったと言う専門家たちの声が、力を与えてくれた」とも言っている。
周囲の懐疑的な声も、彼をさらに、飢えさせていた。
第4シードのジョコビッチは、決勝戦では第1シードのカルロス・アルカラスと対戦する。22歳のアルカラスは、この大会で優勝すれば「史上最年少のキャリアグランドスラム達成者」となる。対するジョコビッチには、「オープン化以降、最年長のグランドスラム優勝者」が懸かる。
決勝戦は、現地(メルボルン)時間の2月1日19時半(日本時間17時半)スタート。どちらが勝っても、テニス史に新たな記録が刻まれる。
現地取材・文●内田暁
【動画】ジョコビッチが接戦の末にシナーを破った全豪オープン2026準決勝ハイライト
【画像】ジョコビッチ、シナーをはじめ全豪オープン2026で熱戦を繰り広げる男子選手たちの厳選写真!
【関連記事】「1勝させてくれて感謝」38歳ジョコビッチが全豪オープンで意地の逆転劇!次は世界1位アルカラスとの頂上決戦<SMASH>
世界4位が、世界2位を破ったという結果だけを見れば、そこまでの事件には見えない。ただ、その世界4位が38歳であること。世界2位は、この2年間でグランドスラム(四大大会)を4度制した24歳であること。ここ2年半の両者の直接対決は、その24歳が5連勝中であること。さらに、今大会の準々決勝で38歳は2セットを失い、相手のケガで棄権するまで敗色濃厚だったこと......。
それら種々の要素を勘案すれば、若い世界2位が圧倒的に有利なのは、揺るがない事実に見える。
しかし、その世界4位の38歳が、24回のグランドスラム優勝を誇り、『GOAT(Greatest of All Time=史上最高)』と謳われるノバク・ジョコビッチとなれば、その限りではないだろう。
テニス四大大会「全豪オープン」準決勝のシナー対ジョコビッチ。ジョコビッチが第1セットを失い、第2セットは取り返すものの第3セットも落とした時、彼の勝利を信じた者は少なかっただろう。
だがジョコビッチは、「自分を信じていた」という。そしてここから、全盛期を彷彿させるプレーを披露した。
シューズの摩擦音を響かせながら、ベースラインから下がることなく左右に走り、あらゆるショットを深く、鋭く打ち返す。攻守一体のその姿は、さながら移動型要塞だ。
第4セット、そしてファイナルセットと試合が進むにつれ、ジョコビッチの表情は冴え冴えとし、ポイント間にベンチと会話を交わすこともなく、全てが洗練されていく。ファイナルセットで3連続ブレークポイントを握られた時も、そして最初のマッチポイントをシナーの脅威のプレーで凌がれた時も、彼が纏う静謐なまでの集中力に揺らぎはない。
2度目のマッチポイントで、バックのクロスラリーの交換の末に、最後はシナーのショットがラインを割る。シナーと試合後の握手を終えたジョコビッチは、両手を天に広げ、大歓声を全身で浴びながら、コート上に両ヒザをついた。
史上最多のグランドスラム優勝を誇り、合計428週世界1位に座した彼が、なぜ今もここまで自分を駆り立てることができるのか――?
その答えは、彼がかつて口にした、次の諺にあるのかもしれない。
「丘を上る狼は、頂点にいる狼よりも飢えている」
これは、彼が無敵の王者だった10年前の全豪オープンを制した時の言葉。当時の彼は、その真理を知るからこそ、「自分は、他者の倍の努力をしなくてはいけない」と言っていた。
そのジョコビッチ自身が今、「丘を上る飢えた狼」となっている。もっとも彼は数日前の会見で、「今のあなたは、アルカラスとシナーを追う立場にいるが」と水を向けられた時、不快感を露わにもした。
「24度グランドスラムで優勝している者に対し、失礼な物言いではないか」......と。
シナーに勝利した後の会見では、「もうジョコビッチは引退すべきだ、あるいは終わったと言う専門家たちの声が、力を与えてくれた」とも言っている。
周囲の懐疑的な声も、彼をさらに、飢えさせていた。
第4シードのジョコビッチは、決勝戦では第1シードのカルロス・アルカラスと対戦する。22歳のアルカラスは、この大会で優勝すれば「史上最年少のキャリアグランドスラム達成者」となる。対するジョコビッチには、「オープン化以降、最年長のグランドスラム優勝者」が懸かる。
決勝戦は、現地(メルボルン)時間の2月1日19時半(日本時間17時半)スタート。どちらが勝っても、テニス史に新たな記録が刻まれる。
現地取材・文●内田暁
【動画】ジョコビッチが接戦の末にシナーを破った全豪オープン2026準決勝ハイライト
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