海外テニス

錦織圭が全米オープン1回戦に勝利!不安はありつつも地力に勝るプレーで相手の棄権を引き出す

内田暁

2019.08.26

試合前の錦織とトルンゲリッティ。写真:山崎賢人(スマッシュ写真部)

全米オープン男子シングルス回戦 8月26日 (現地時間)
錦織圭JPN)  61 41 ret  M・トルンゲリッティARG

 オープニングポイントは、バックサイドに大きく振られた中で放つ、鋭角の高速パッシングショット。続く2ポイントは、フォアから左右に放たれる強打で奪ったものだった。最後は、錦織のリターンを恐れた相手が犯したダブルフォールトで、いきなりつかみ取ったブレーク。この時点で対戦相手のトルンゲリッティは、勝利への可能性が極めて小さいことを感じたのではないだろうか。

 アルゼンチン出身の小柄なストローカーは、錦織と誕生日をわずか1カ月隔てた29歳。キャリアの大半をフューチャーズとチャレンジャーで過ごし、グランドスラムでの戦績はローランギャロスでの2回戦が最高。他にも全豪の出場経験はあるものの、全米オープンは今回が初めての本戦の舞台だった。その本戦初戦での錦織との対戦を知った時、「大きな舞台で、トップ選手と試合ができるのは夢だった」という彼は、喜びに胸を満たされたと言う。
 予選3試合を戦ったことの疲労を、トルンゲリッティは否定する。ただ、グランドスラムの初戦では誰もが硬さを覚え、オーバーペースでケガや痙攣に襲われることも珍しくない。今回、初の全米でトップ10選手と戦う彼が、緊張感と高揚感で、本人も知らずしらずのうちに、身体に負荷を掛けていたとしても不思議ではないだろう。錦織が4-1とリードした第6ゲームで、錦織が放ったスライスを拾いに走った時、トルンゲリッティは脇腹に痛みを覚えたと言う。その後、治療を受けプレーを継続するが、もはや勝利は絶望的と悟った彼は、第2セットも錦織が4-1とリードした時点で棄権を申し出た。

 わずか47分でのスピード勝利に、錦織は体力温存できたことに安堵する一方で、「本当はもうちょっとやって、試合勘なり緊張感なりを味わいたかった」との本音も漏らす。今夏、北米ハードコート未勝利でUSオープンを迎えていただけに、良い感覚とリズムを試合でつかんでおきたかったのは本音だろう。