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「試合を愛している」39歳を迎える元世界8位のメルツァーが、いまだ挑戦を続ける理由を語る【男子テニス】

誉田優

2020.03.12

昨年のヨーロピアン・オープンでダブルス優勝を飾ったメルツァー(左)とペアのマラチ(右)。(C)GettyImages

 ATPツアーシングルス5勝、2010年の全仏オープンでは、ノバク・ジョコビッチを破りベスト4に進出するなどの活躍で、世界8位にまで上り詰めたユルゲン・メルツァー。2018年、当時37歳だった彼は、母国オーストリアのエルステ・バンク・オープンを最後に、シングルスのコートを後にした。

 だが、彼の選手としてのキャリアはまだ終わっていない。シングルスでは、思うようなプレーができなくなってしまったが、現在はダブルスツアーを転戦している。経験豊富なベテランプレーヤーは、何を思い挑戦を続けるのか。ATPツアー公式サイトが特集した。

 2016年に結婚した妻ファビネと、もうすぐ3歳になる息子の3人家族を支える父にとって、人生を考えるということは、家族の選択でもある。

「妻と話し合って、言ったんだ。『わかった、2019年のうちに決断するよ。ダブルスで全仏オープンまで挑戦してみて、80位以内に入れそうなら、そして大きな大会で優勝できそうなら、続けるよ』ってね。

 すると妻は『オーケー。あなたができることをして。そうすれば、後悔はしないはずだから』って言ってくれた。彼女は元水泳選手だから、大好きなことをやめるってどんなものか知っているからね」
 
 かくしてダブルスに転向したメルツァーは昨シーズン、ATP500大会を含むツアー3勝を挙げ、現在ダブルスランキング35位(3月9日時点)と活躍中。それでもやはりシングルスを懐かしむ気持ちはあるという。

「いつか、シングルスを恋しく思う日が来るってことは、100%確実に言える。でも、最も良い引き際を選んだんだ。ミロシュ(ラオニッチ)を倒した日が僕のシングルス選手として最後の日だった。次の試合はプレーできなかったけど(体調不良のため棄権)、それでよかった。

 20年、選手でいればわかる。若返ることはできないし、この年で活躍できるロジャー・フェデラーみたいな人はほんの一握りだからね」

 それでも、いまだ挑戦を続けたいと思えるのは「試合を愛しているから」だという。

「賞金が欲しいわけではない。大きな大会で勝つ感覚を味わいたくて、試合に出続けている。もしやめていたとしたら、後悔しているだろうね。まだ何かを成し遂げられると感じている。これまで20年以上テニスを続けてきたんだ。続けない理由があると思うかい?」

 5月に39歳の誕生日を迎えるメルツァーの挑戦はまだ続きそうだ。

文●誉田優
フリーライター。早稲田大学スポーツ科学部卒業。
Twitter:yu__honda/Instagram:yu__honda

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