テニス四大大会「全米オープン」の男子シングルスで殊勲の初優勝を飾った世界ランキング2位のアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ/29歳)。決勝では第8シードで大会時9位の地元勢ベン・シェルトン(アメリカ/23歳)を6-3、7-6(2)、5-7、6-2で退けて戴冠を果たしたが、試合終了直後には思わぬ珍事が起きていた。
試合はズベレフが第4セットを5-2とリードして迎えた第8ゲームのサービング・フォー・ザ・チャンピオンシップをキープし、3時間33分の激闘に終止符を打った。ところが当の彼はそのままベースライン後方へと下がり、次のリターンゲームに備えようとしたのだ。しばらくして自身が勝利したことに気付くと、両手を高々と掲げて喜びを表し、スタンドから降り注ぐ大歓声に応えた。
ATP(男子プロテニス協会)公式サイトによると、この時ズベレフはボックス席で戦況を見守っていた自陣営の様子を見て初めて、試合が終わったことを理解したという。優勝後のメディア対応では当時の状況について、次のように話している。
「あの瞬間はかなりゾーンに入っていて、周りの音も全く聞こえていなかった。ある種のトンネルの中にいるような状態で、本当に何も聞こえなかったんだ」
さらに「観客の大歓声で審判の声を聞き取ることができなかったから、主審が試合終了を告げた声も聞こえなかった」と説明。「それに、単純にスコアを忘れていた。6-2ではなく、まだ5-1だと思っていた」とも明かした。
ただ結果的には、この何とも珍しい勘違いが、彼にとって良い方向に作用したとも考えられる。
6年前の2020年大会でも決勝に進出したズベレフは、ドミニク・ティーム(オーストリア/元3位)を相手に最初の2セットを連取。さらにファイナルセットでは5-3でサービング・フォー・ザ・チャンピオンシップを迎え、四大大会初制覇まであと2ポイントに迫った。
しかし、そこからまさかの逆転を許して6-2、6-4、4-6、3-6、6-7(6)で敗戦。あと一歩まで迫った悲願のタイトルを逃し、ズベレフにとって長く心に残る痛恨の敗戦となった。だからこそ今回、優勝を決めたことさえ認識せず、目の前のプレーだけに集中できていたのは、ある意味では理想的な精神状態だったのかもしれない。
ズベレフ自身は、あの敗戦で負った“深い傷”が、今年6月の全仏オープンで四大大会初優勝を果たしたことで消えたと明かす。
「パリで優勝する前は、ずっと大きなストレスを感じていた。『自分は本当に四大大会で優勝できるのだろうか?』という疑問が常にあったからね。今は、そういう舞台でプレーすることを、より楽しめていると思う」
一度はつかみ損ねたニューヨークの栄冠。それから6年、あの時の“忘れ物”は、ただただプレーに没頭した末に、ようやくその手に戻ってきた。
文●中村光佑
【動画】ズベレフが優勝に気付かず遅れて歓喜したシーン
【画像】ズベレフがシェルトンとの熱戦を制し初の戴冠!「2026全米オープン決勝」を厳選写真で特集!
【関連記事】ズベレフの“多すぎるボール突き”にハチャノフが文句! 元世界1位ロディックは「セカンドサービスにもショットクロックが必要」と提案<SMASH>
試合はズベレフが第4セットを5-2とリードして迎えた第8ゲームのサービング・フォー・ザ・チャンピオンシップをキープし、3時間33分の激闘に終止符を打った。ところが当の彼はそのままベースライン後方へと下がり、次のリターンゲームに備えようとしたのだ。しばらくして自身が勝利したことに気付くと、両手を高々と掲げて喜びを表し、スタンドから降り注ぐ大歓声に応えた。
ATP(男子プロテニス協会)公式サイトによると、この時ズベレフはボックス席で戦況を見守っていた自陣営の様子を見て初めて、試合が終わったことを理解したという。優勝後のメディア対応では当時の状況について、次のように話している。
「あの瞬間はかなりゾーンに入っていて、周りの音も全く聞こえていなかった。ある種のトンネルの中にいるような状態で、本当に何も聞こえなかったんだ」
さらに「観客の大歓声で審判の声を聞き取ることができなかったから、主審が試合終了を告げた声も聞こえなかった」と説明。「それに、単純にスコアを忘れていた。6-2ではなく、まだ5-1だと思っていた」とも明かした。
ただ結果的には、この何とも珍しい勘違いが、彼にとって良い方向に作用したとも考えられる。
6年前の2020年大会でも決勝に進出したズベレフは、ドミニク・ティーム(オーストリア/元3位)を相手に最初の2セットを連取。さらにファイナルセットでは5-3でサービング・フォー・ザ・チャンピオンシップを迎え、四大大会初制覇まであと2ポイントに迫った。
しかし、そこからまさかの逆転を許して6-2、6-4、4-6、3-6、6-7(6)で敗戦。あと一歩まで迫った悲願のタイトルを逃し、ズベレフにとって長く心に残る痛恨の敗戦となった。だからこそ今回、優勝を決めたことさえ認識せず、目の前のプレーだけに集中できていたのは、ある意味では理想的な精神状態だったのかもしれない。
ズベレフ自身は、あの敗戦で負った“深い傷”が、今年6月の全仏オープンで四大大会初優勝を果たしたことで消えたと明かす。
「パリで優勝する前は、ずっと大きなストレスを感じていた。『自分は本当に四大大会で優勝できるのだろうか?』という疑問が常にあったからね。今は、そういう舞台でプレーすることを、より楽しめていると思う」
一度はつかみ損ねたニューヨークの栄冠。それから6年、あの時の“忘れ物”は、ただただプレーに没頭した末に、ようやくその手に戻ってきた。
文●中村光佑
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