第1セットを取った後の、第2セット。ゲームカウント4-0とリードしながらも、逆転で奪われた。第3セットでは早々に、相手に3連続ブレークポイントを握られる危機に直面する。それでも彼女は、切り抜けた。
「色んな考えが、去来した」
勝者が、試合後に明かす。
「ただそれらの思いから、逃げてはいけないと思った。全てのポイントでファイトすること。攻撃的にプレーすること。それを重ねていくしかないと思っていた」
WTA500の「東レパンパシフィックオープンテニス」。2026年シーズン終盤戦の大会を制したのは、決勝でレイラ・フェルナンデス(カナダ)を6-4、5-7、6-2で破ったディアナ・シュナイダー(ロシア)だった。
長いシーズンの終盤戦は、誰もが心身の疲れを抱える時期。今大会でも多くのトップ選手たちが、ケガ等を理由に直前で出場を取りやめた。
ただその機を、チャンスととらえる選手もいる。世界ランキング13位のシュナイダーも、その1人だったろう。
今から1年2カ月前、シュナイダーは新たなコーチをチームに招いた。コーチの名は、サーシャ・バイン。日本のテニスファンや関係者の間では、「大坂なおみを世界1位に導いた人物」として広く知られているだろう。
大坂はバインコーチを「モチベーター」と評していた。自分の可能性を信じさせてくれる。精神的な安心感を与えてくれる。それが、バインと組んでいた時の大坂が、結果を残せた大きな要因だったという。
その手腕をバインは、22歳のレフティ相手にも発揮した。試合中にもアイコンタクトと共に時に笑みも交わす姿からは、両者の深い信頼関係がにじむ。実際にシュナイダーは、バインについて「どんな時でも私をプッシュしてくれる。彼と取り組んでから、精神的な安定感が増した」と話していた。
「肉体的には、常に疲れていた」というシュナイダーの身体を突き動かしたのは、「強くなった」というその心だったかもしれない。準々決勝ではアレクサンドラ・イーラ(フィリピン)と2時間52分の死闘を演じ、窮地を切り抜け逆転勝利をもぎ取った。その翌日の準決勝でも、疲れを見せず精力的にコートを走った。
迎えた決勝戦でも、彼女のプレーは、基本的にそれまでの勝ち上がりと変わらない。決まったと思われる相手のショットにも手を伸ばし、ねじ込むように打ち返した。第2セット終盤でフェルナンデスの猛攻を受けながらも、第3セットで立て直す。今大会を通じて4試合戦い、そのうち3試合がフルセット。まさに精神力で勝ち取ったタイトルだった。
決勝の勝利後、一目散にファミリーボックスに駆け寄ったシュナイダーは、バインコーチと“シークレットハンドシェイク”からハグを交わす。シークレットハンドシェイクとは、両者だけが知る特定のルーティンで交わす、ハンドシグナルのようなもの。まさに二人の絆の証だ。
今大会の優勝で、シュナイダーのランキングは11位となりトップ10に肉薄する。シーズン最後の大会での優勝は、既に来季への好スタートだ。
取材・文●内田暁
【画像】フルセットの熱戦を制したシュナイダーがPPO初戴冠。ダブルスはエラニ/パオリーニのイタリアペアが優勝|東レPPOテニス
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「色んな考えが、去来した」
勝者が、試合後に明かす。
「ただそれらの思いから、逃げてはいけないと思った。全てのポイントでファイトすること。攻撃的にプレーすること。それを重ねていくしかないと思っていた」
WTA500の「東レパンパシフィックオープンテニス」。2026年シーズン終盤戦の大会を制したのは、決勝でレイラ・フェルナンデス(カナダ)を6-4、5-7、6-2で破ったディアナ・シュナイダー(ロシア)だった。
長いシーズンの終盤戦は、誰もが心身の疲れを抱える時期。今大会でも多くのトップ選手たちが、ケガ等を理由に直前で出場を取りやめた。
ただその機を、チャンスととらえる選手もいる。世界ランキング13位のシュナイダーも、その1人だったろう。
今から1年2カ月前、シュナイダーは新たなコーチをチームに招いた。コーチの名は、サーシャ・バイン。日本のテニスファンや関係者の間では、「大坂なおみを世界1位に導いた人物」として広く知られているだろう。
大坂はバインコーチを「モチベーター」と評していた。自分の可能性を信じさせてくれる。精神的な安心感を与えてくれる。それが、バインと組んでいた時の大坂が、結果を残せた大きな要因だったという。
その手腕をバインは、22歳のレフティ相手にも発揮した。試合中にもアイコンタクトと共に時に笑みも交わす姿からは、両者の深い信頼関係がにじむ。実際にシュナイダーは、バインについて「どんな時でも私をプッシュしてくれる。彼と取り組んでから、精神的な安定感が増した」と話していた。
「肉体的には、常に疲れていた」というシュナイダーの身体を突き動かしたのは、「強くなった」というその心だったかもしれない。準々決勝ではアレクサンドラ・イーラ(フィリピン)と2時間52分の死闘を演じ、窮地を切り抜け逆転勝利をもぎ取った。その翌日の準決勝でも、疲れを見せず精力的にコートを走った。
迎えた決勝戦でも、彼女のプレーは、基本的にそれまでの勝ち上がりと変わらない。決まったと思われる相手のショットにも手を伸ばし、ねじ込むように打ち返した。第2セット終盤でフェルナンデスの猛攻を受けながらも、第3セットで立て直す。今大会を通じて4試合戦い、そのうち3試合がフルセット。まさに精神力で勝ち取ったタイトルだった。
決勝の勝利後、一目散にファミリーボックスに駆け寄ったシュナイダーは、バインコーチと“シークレットハンドシェイク”からハグを交わす。シークレットハンドシェイクとは、両者だけが知る特定のルーティンで交わす、ハンドシグナルのようなもの。まさに二人の絆の証だ。
今大会の優勝で、シュナイダーのランキングは11位となりトップ10に肉薄する。シーズン最後の大会での優勝は、既に来季への好スタートだ。
取材・文●内田暁
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