レッスン

【テニスギア講座】オールコート用シューズは本当にオールマイティー? 専用シューズとの違いを知ろう

松尾高司

2020.03.29

プロはサーフェス別に専用シューズを履く。初級者がオールコート用で全て賄うのは仕方ないが、いずれは別々に揃えたい。写真:茂木あきら(THE DIGEST写真部)

 テニスショップへ行くと、壁にびっしりとシューズが展示され、大抵「オールコート用」と「オムニクレー用」に二分されています。オールコート用はその名の通り、本当に全コートで満足できる性能なのでしょうか?

 テニスコートは表面(サーフェス)の違いによって「ハード」「オムニ(砂入り人工芝)」「クレー」の3種に大別できます。ハードコートは、アスファルト舗装の上に少し柔らかい層を重ねて、滑りにくさと衝撃緩和対策を施してあります。オムニは、人工芝の間に砂を充填して芝が倒れないようにし、接地した時に衝撃が少ないのが特徴。かつて日本のコートの主流だったクレーは、土と砂で固められたサーフェスです。

 各サーフェスは、シューズがどう接地して、どういうシステムで止まるのか、という点で差があります。ハードはソール(シューズの裏の接地面)との「摩擦で止まる」システム。クレーは、溝や凸凹のあるソールで、コート表面を引っ掻きながら止まります。オムニは、イボイボを芝の間に食い込ませたり、溝で引っ掻きながら止まるというものです。

 以前は「ハード専用」「クレー専用」「オムニ専用」と、テニスシューズは細分化されていましたが、3足持つのは大変だろうと、便利な「オールコート用」が増え、いまや大勢力を誇っています。では、本当に全てのコートでオールマイティーなのか? もしそうなら「オムニクレー用」など必要ないですよね? そう、オールコート用というのは「一応全サーフェスでプレーできるが、専用シューズほどではない」ということです。
 
 進化の過程からいえば、元は溝が少ないハードコート用を、溝を増やして、オムニやクレーでも使えるようにしたのがオールコート用です。ですから、ハードコートでの使用にはオールコート用が適しています。現在ではハード専用シューズがほとんどないので、これをハード用と考えて差し支えありません。

 たまにオムニでプレーしたり、合宿ヘ行ってみたらクレーだったというケースでは、「まぁ何とか使える」くらいに考えておくのがいいでしょう。本当はオールコート用とオムニクレー用の2足を持っていてほしいですが、使用頻度を考えると、「我慢して使いましょう」と言うしかありませんね。

 ただ、オールコート用にも「ハード向き」と「オムニクレー向き」があります。見分けるためのザックリしたガイドラインは、ソールパターンのブロックが大きめで、溝が浅くて少ないものがハード向き。逆にパターンが細かめで、溝が深いのが、オムニクレーでのプレーを強めに意識したモデルです。

 テニスシューズはソールパターンが非常に大切です。安易にデザインなどで選ばず、自分のプレー環境にマッチしたものを、ショップスタッフとよく相談して決めましょう。

文●松尾高司(KAI project)

※『スマッシュ』2018年3月号より抜粋・再編集

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