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「活動全ての中心にテニスファンを置くべき」苦境に立たされた今、今期就任したATP会長が語るテニスの未来

東真奈美

2020.04.21

ATPの主な財源になっているという「Nitto ATPファイナルズ」。(C)Getty Images

 ツアーが中断するという、今までにない困難に直面しているテニス界。今年の1月1日からATP会長となった元選手のアンドレア・ガウデンツィ氏は、この危機をどのように乗り越え、どのような未来へと導こうとしているのだろうか。ATPテニスラジオのインタビューに答えている。

「テニス団体組織が集合し、ツアー日程や今後の方向性から、選手のフォローやサポートなど、多くの課題について話し合っています。今回の緊急時に、組織が集合して話し合えるようになったことが、良い成果と言えるかもしれません」と、46歳のビジネスリーダーは、新型コロナウイルスが世界を掌握していると言ってもよい現状で、テニスの団体組織が協力できていることを、プラスの成果として見ている。

 というのも、彼が見据えているテニスの将来図は、他のスポーツや娯楽と競争していかなくてはならないと考えているからだ。「メディアやデータ配信にかんしては、今後ますます必要性があると思っています。放送、データ情報、ストリーミングなどデジタルとの連携が重要で、その機能を一元化していくことです」。そのためには、WTA(女子テニス協会)、ITF(国際テニス連盟)、グランドスラムの組織と密に連携し、結束を固めることが必須であり、その土壌が今回作られたということだ。

 また、世界中で大会が開催されていることも、今後の大会放映のスタイルにマッチしていると考えている。「約半年間、一日中トッププレーヤーたちの試合を、いくつものタイムゾーンでプレミアムコンテンツとして配信することができました。これは放送局にとって素晴らしい素材です。将来的にはAppleやNetflixのようなスポーツの権利を獲得し始める企業が増えると信じています。アマゾンはすでに開始しています」 と、テニスの未来の可能性を語った。
 
 テニスファンにとって注目すべきコメントも残している。「我々は活動全ての中心にテニスファンを置くべきです。ファン目線に焦点を当て、より良いファン体験を提供していきます」

 だたし、経済面で苦しい状況に陥っている選手たちの救済策は、まだ見つけられていない。「難しいのはATPの財源も無限ではないということです。我々は大会に依存しており、それはいつ再開されるのかわかりません。ATPの大きな収益の1つは、実際には『Nitto ATPファイナルズ』 です。穴の深さが正確にわからないうちは、完全にそこまで行き着くことは難しい。それでも我々は、プレーヤーたちを助けるために努めています」と、苦しい現状も素直に話している。そんな中でトッププレーヤーたちが、下位の選手たちを助けるために動いてくれていることには「心を打たれた」と打ち明けた。

 就任早々に困難な状況に立ち向かわなければならないガウデンツィ氏。「根っからの楽天主義者」と自身のことを評するイタリア人は、代々続くテニス一家に生まれ、現役時代は、3つのツアータイトルを獲得し、キャリアハイは18位という成績を誇っている。引退後に法律の学位とMBAを取得し、エンタメ、情報、テクノロジー、メディアでの順調なビジネスキャリアを積んできた。テニス愛に溢れたビジネスマンが導く、テニス界の未来に期待したい。

文●東真奈美

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