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打点を前に取らない?――伊藤竜馬プロが伸びるサービスのために心掛けている意外なコツ【プロが明かすテニス上達法】

スマッシュ編集部

2020.05.29

時速200キロ級のスピードを持つ伊藤竜馬のサービス。優勝した18年全日本選手権より。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真部)

 プロテニス選手は、目の覚めるようなスピードショットをいとも簡単にたたき込む。なぜあんなボールが打てるのか? その秘訣をプロ本人に明かしてもらうシリーズ。今回はATP最高60位の伊藤竜馬プロが、サービスについて語ってくれた。

 伊藤プロというとフォアが有名だが、サービスも十分に強力だ。今年の全豪オープン2回戦では、相手のジョコビッチを上回る最速203キロをマーク。普段、どんなことを意識しているのか尋ねると――

「サービスで僕が意識しているのは、トスを前に上げすぎないことです」
という答えが返ってきた。普通はスピードを出すには打点を前に取りそうなものだが、意外である。その理由はこういうことだ。

「トスが前すぎると、身体が早く落ちてしまうんです。そうなるといいサービスは打てないので、トスを少し手前に調整し、アゴと胸をしっかり上げて打つようにしています。するとボールがネットを越えてから伸びていきますね」
 
 伊藤プロがこれを意識するようになったのは、かつてトスでサービスの調子を崩した経験があるからだ。
「以前はトスを結構前に上げようとしていたんですが、だいたい焦って身体が早く落ち、ネットばかりしていたんです。それで前すぎず後ろすぎず、自分が一番力を入れやすい所を見つけて、そこにトスするようにしました」

 その位置というのは、具体的な目安があるのだろうか。
「トスするとき、左手を右斜め前から上げますよね。その真上にトスするイメージです」と伊藤プロ。加えて、「上げた左手はボールをキャッチするかのように上に残すと、やはり身体が落ちるのを防ぎやすくなります」とアドバイスしてくれた。

 打点を前に、と常々考えている一般プレーヤーは多いと思う。スピードを出したい人もそうだが、ネットが多くて安定しない人も、一度発想を逆転してみてはいかがだろう。

【プロフィール】伊藤竜馬/いとうたつま
1988年5月18日、三重県生まれ。180cm、75kg、右利き。ストローク、サービスとも高速ショットで攻めるスタイル。特にフォアは「ドラゴンショット」と呼ばれ強力だ。2012年にATP最高60位を記録し、ロンドン五輪に出場。全てのグランドスラム本戦に出場経験があり、今年の全豪では2回戦に進出した。北日本物産所属。

構成●スマッシュ編集部

※『スマッシュ』2019年7月号より再編集

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